国立研究開発法人 科学技術振興機構

第2回全国大会ダイジェスト・レポート

全国47都道府県の代表生徒たちが見せた、科学への情熱とチームの力

全国の高校生がチームを組んで科学の知識と技能を競う「第2回 科学の甲子園全国大会」(主催・独立行政法人科学技術振興機構[JST])が、3月23日~25日に兵庫県西宮市で開催され、47チーム・358名が5つの競技に挑戦しました。各都道府県での代表選考には前回を上回る6,000名以上が参加し、大きな盛り上がりを見せた今大会。3日間の模様をダイジェストでお届けします。

協働パートナーのロゴが掲載された横断幕
【体育館の外壁も「科学」の文字で
飾られいつもとは違う風景を提供】

勝利のカギは、一人ひとりの得意分野を生かしたチームプレー

大会初日の23日は、開会式に続いて、筆記競技と2つの実技競技を行いました。科学の甲子園では、筆記(1競技)と実技(4競技)のすべてにチームで臨みます。理科や数学、情報、ものづくりといった各自の得意分野を生かしながら、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力を駆使してチームとしての問題解決力を競います。

額を寄せ合って筆記競技に取り組む選手たち
【6名が額を寄せ合って解いた筆記競技】

実技競技①は、開催地の兵庫県にちなんだ「灘の酒」。市販のパン酵母とショ糖、六甲のミネラルウォーターを用いてアルコール発酵の実験を行い、発生した二酸化炭素の捕集量や実験レポートの内容などを競います。同競技の内容は前もって公開されており、各チームとも事前学習を繰り返してきた様子。容器の組み立てや発酵に最適な温度管理など、事前に作成したノートを参照しながら実験を行い、レポートの作成に取組んでいました。

実技競技 1 に取り組む選手たち
【白衣は貸与。実技競技1】

実技競技②は、「金平糖」の模型の表面積計測です。こちらは問題がその場で公開されるため、臨機応変な発想力と実行力が求められます。高校生たちはチームの仲間と相談しながら、模型の表面にマニキュアを塗る、ビーズを貼りつける、粘度を貼り付け球体に近づけるなど、さまざまな方法で課題に取り組んでいました。

実技競技 2 に取り組む選手たち
【実技競技2で使用した金平糖は模型でした】

実験、ものづくり、プログラミングまで、競技テーマも拡大

大会2日目は、各3名のチームに分かれて2つの実技競技に臨みました。実技競技③「君に届け!熱いメッセージ!」は、科学の甲子園で初めてのプログラミング関連の競技。加速度センサーデバイスを使って文字入力をするためのプログラムを作成し、制限時間内に入力できた文字数とプログラムの完成度を競いました。

実技競技④は、前回大会でも行われた「クリップモーターカー・フォーミュラー1」です。所定の材料で作った模型自動車の速さを競うもので、今回は車両規定がより厳格になり、コースも3mと長くなるなど、難易度が上がっています。各チームの事前準備もあってレース内容もレベルアップし、予選から好タイムが続出。決勝は上位2チームが2秒台で争う展開となり、観客席からもどよめきが上がっていました。

実技競技 3 に取り組む選手たち
【PC47台がフル稼働した実技競技3】
自作のモーターカーを見つめる選手たち
レースを見守る観客とタイムを計測する審判
【走らせるほうも計測するほうも共に真剣勝負だった実技競技4】

午後には、山極寿一先生(京都大学理学部長)、新井紀子先生(国立情報学研究所教授)、中川誠人先生(京都大学iPS細胞研究所講師)、小倉康(JST理数学習支援センターシニアアナリスト)等による特別シンポジウムが開かれました。「科学研究のポイントは、広い分野の人に訴えられる魅力的かつ根源的な問いを立てること」(新井先生)、「研究活動では、答えのない課題に挑戦する力、チーム力、競争力が重要。科学の甲子園で学べることは多い」(山極先生)といったメッセージに、高校生たちも熱心に耳を傾けていました。

前回大会の経験を生かした、愛知県立岡崎高校チームが優勝

競技終了後の表彰式では、大会実行委員長の中村道治JST理事長が「この舞台から世界で活躍する多くの人材が生まれることを期待したい」と挨拶。来賓として登壇した福井照文部科学副大臣は、「今大会で得られた経験や仲間との絆を、“甲子園の土”として持ち帰ってほしい」と参加した高校生たちに呼びかけました。また吉本知之兵庫県副知事は、「この大会が全国各地にさらに根付いていくことを期待したい」と述べました。

祝福を受ける総合成績上位チーム
【優勝は愛知県立岡崎高校チームでした】

科学の甲子園では、筆記競技と実技競技の得点を加算した総合成績で順位を競います。第2回大会の優勝は、愛知県立岡崎高等学校チーム。灘高等学校(兵庫県)チームが第2位、筑波大学附属駒場高等学校チーム(東京都)が第3位となり、それぞれ表彰状とメダルが授与されました。このほか、各競技の成績優秀チームなどにも企業協働パートナーから企業賞が贈られました。

優勝した岡崎高校チームは、2年生6名、1年生2名の編成。前回大会で3位入賞の好成績ながら、「やり残したことがあると感じていました」と話す砂田佳希さんをキャプテンに、物理、化学、生物、数学など各分野のスペシャリストを揃えてきました。今大会では実技③でトップ、実技④でも2位に入る安定した強さを見せての総合優勝です。
メンバーは今回の勝因について、「チームワーク」「去年の経験」「充実した準備」を挙げます。代表決定後は各競技の担当メンバーが毎日集まり、事前実験やモーターカーの試作などに取り組んできました。実技③の準備では、担当の末木達也さんが「ゲーム機のコントローラを加速度センサーに見立てて練習できないか」と提案。これをプログラミングの得意な砂田さんが実現させ、本番に近い環境で練習できたことが好成績につながりました。「チームのメンバーはもちろん、大会に参加しなかった友だちからもたくさんのアイデアをもらいました。地道な準備が実ってうれしいです」と末木さん。砂田さんも、「去年の経験を生かして、やり残したと感じた部分でもしっかり成果を出せました」と満足そうに振り返っていました。
なお県立岡崎高校チームは、今年5月に米国で開かれるサイエンス・オリンピアド2013に親善チームとして参加します。

科学への夢を抱く仲間がつくれる、さまざまな交流イベントも

科学の甲子園は成績を競うだけでなく、参加した高校生たちが親睦を深める場も用意されています。競技後のフェアウェルパーティや最終日のエクスカーションでは、科学への夢を共有する仲間をつくろうと、チームの枠を越えて交流する姿も多く見られました。

甲子園で科学好きな仲間に出会えた選手たち
【甲子園で出会った科学好きな仲間たち】

また大会2日目には、企業や学校現場の科学教育の担当者らが意見交換する交流会も実施。理系の女性人材の育成をテーマに、学校現場での指導のあり方や産学官の連携の可能性などを実社会で役立つ教育について話し合いました。
チームで競うというコンセプトが、より多くの学校現場や高校生たちに認知され、前回以上の盛り上がりを見せた第2回 科学の甲子園全国大会。第3回の全国大会は、平成25年度に同じく兵庫県で開催される予定です。