国立研究開発法人 科学技術振興機構

第11回全国大会ダイジェスト・レポート

47の代表校から筆記競技の模様が届き、
全国が科学でつながった分散開催

2022年3月19日、各都道府県の会場をオンラインでつないで「第11回科学の甲子園 全国大会」が開催されました。本来であれば、茨城県つくば市に全国47の代表校が集まり、4日間にわたって筆記と実技の競技が行われるはずでしたが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を考慮し、各校で筆記競技のみを行う分散開催となりました。全国の科学好きな高校生がつながり科学に挑んだ全国大会の様子をお伝えします。

総計666校から選ばれた代表47校

代表の47校は、各都道府県教育委員会によって催される予選を勝ち抜いた都道府県の代表校です。今回、地方予選には全国で666校7,725名の生徒が参加しました。各校8名から成るチームは、同じクラスの仲良しから校内選抜によって編成されたチームまでさまざまでしたが、この日のために互いの力を高め合い、科学の難問に挑みました。

全国各地をつなげたオンライン開会式

オンライン開会式オープニングスライド
手を上に広げて「広げよう」と語る司会者
ポーズを作って「科学の」と語る司会者
手で輪を作って「輪」と語る司会者
全国の選手たちがつながった決意表明パフォーマンス

2022年3月19日(土)、オンラインによる開会式で幕を開けました。大会スローガンは「広げよう科学の輪 活かそう科学の英知」。司会者によるスローガンの読み上げに合わせ、各会場にいる376人の選手が心を一つにしてボディパフォーマンスによる決意表明を行いました。

開会の挨拶では、国立研究開発法人科学技術振興機構の濱口道成 理事長が、環境問題など地球規模の課題の解決が求められる現代にはチームの力が重要だとして、「競技を通して、よりいっそうのチームワークを育んでほしい」と、この大会に対する期待を述べました。共催者挨拶では、開催予定地だった茨城県の薄井秀雄 産業戦略部技術振興局長と、同県つくば市の五十嵐立青 市長が登壇し、「つくばで開催できないことは残念だが、科学好きの皆さんには、将来、つくばの研究学園都市に来て最先端科学技術のリーダーとして活躍してほしい」と選手たちにラブコールを送りました。

その後、開会式恒例の入場行進に代わり、47の代表校が写真と大会への決意を書いたスライドで紹介されました。「甲子園と聞いてグローブは持参してきました。どんな問題が飛んできても全部キャッチ(静岡県代表)」、「高校野球と併せて甲子園二冠へ!(和歌山県代表)」、「改名好きな鳥取県 大会中は勝取県!(鳥取県代表)」、「探究心とチームワークを発揮し、全力で楽しみたいと思います(広島県代表)」、「先輩に連れてきて頂いたこの場に 今年は後輩を連れてくることができました(高知県代表)」など、闘志とともに、日頃から仲間と一緒に科学を楽しんでいる様子が伝わってきました。

岩手県代表岩手県立盛岡第一高等学校の紹介スライド
福井県代表福井県立藤島高等学校の紹介スライド
三重県代表三重県立伊勢高校の紹介スライド
山口県代表山口県立山口高等学校の紹介スライド
開会式で流された代表校を紹介するスライド

6分野12問に8人で挑戦、チームワークが試された筆記競技

筆記競技は120分間で物理、化学、生物、地学、数学、情報の6分野12問に挑みました。

競技終了後、茨城県代表の並木中等教育学校と鳥取県代表の米子東高等学校に話を聞くことができました。「いろいろ準備をしてきたけれど、やっぱりわからないことがあって、科学の甲子園の問題は難しいと思いました」、「問題を解くのは本当に楽しかったです。難しいほど解けた時の感動が大きくて、今は達成感に満ちています」、「途中行き詰まっていたので、計算が合った時には思わずガッツポーズが出てしまいました」などの感想が上がりました。

中でも、源平の戦いで平氏の舟上に掲げられた扇を那須与一が矢で射落としたという史実に基づいた物理の問題が印象に残ったようで、多くの生徒が、「まず、いきなり絵が出てきて驚きました。解き進めながら、歴史的な出来事を物理学でシミュレーションできることに気付きました」、「古典の物語に結び付けられた物理の問題を解くのは初めてで、カルチャーショックを受けました」、「物理の力学はすごく好きなのですが、この問題には驚かされました」と語りました。普段の授業では出てこない意表を突くような問題が出されるのも、科学の甲子園ならではです。

協力して難問に挑む東京都代表の選手たち
協力して難問に挑む千葉県代表の選手たち
協力して難問に挑む愛知県代表の選手たち
会場で筆記試験に取り組む選手たち
各会場でチーム一丸となって難問を解き進めていく選手たち

開催地代表校としてみんなを迎えたかった

茨城県代表の並木中等教育学校は、2年連続、5回目の全国大会出場の常連校です。県大会までは2年生もいましたが、全国大会には1年生だけで参加しました。キャプテンは、「開催地の代表校として“全国のみんな、かかって来い”という強い気持ちで臨みました」と語ってくれました。また、つくばには科学好きにはたまらない研究所や体験施設がたくさんあるので、それらをぜひ全国から集まった選手たちに直接見て欲しかったそうです。

全国大会に向けてどのような準備をしてきたかを尋ねたところ、「わからないことがあったら、友達と共有して深く掘り下げることが大事。そのための話しやすい雰囲気づくりを心掛けました」、「科学の甲子園ジュニア大会の経験を今大会へ昇華させられてよかった」「競技の時だけでなく、普段から一緒にいて楽しいチームなんです」と、チームの仲の良さが大事だということがメンバーから次々に語られました。

インタビューに答える茨城県代表茨城県立並木中等教育学校の選手たち
茨城県代表の並木中等教育学校

初出場で、いつも以上のチームワークを発揮!!

鳥取県代表の米子東高等学校は、今回が全国大会初出場。その喜びをキャプテンは「県大会でこれまでずっと2位でした。やっととれた1位で、米子東の名前が全国に出るんだって思うと本当に嬉しかったです」と語りました。

勝因を尋ねると、「一人ひとりが個性の塊のようなメンバー。その個性でお互い補い合えるのが強みです」と答えてくれました。実際、数学を担当した生徒から、「まず、問題を解く方針を立てるのが難しかったです。解けると思っていた方式で解けなくて困っていたら、一緒に解いていたメンバーからすごくいいヒントがもらえました」という話があり、チームの強みが本番でも十分に発揮されたようです。また、「実技競技に出る予定でしたが、分散開催で筆記競技になりました。準備期間が1カ月しかありませんでしたが頑張りました」と、個人の頑張りもこのチームの強さを支えました。

また、今大会の応援団を務める、芸人で科学コミュニケーターの黒ラブ教授が、競技後の選手を直接労いたいと両校のオンライン・インタビューに登場。「どんな問題が出たの?」「神が降りてきた~っていう瞬間はあった?」「勝負飯は何を食べたの?」などの話題で生徒との会話を楽しみました。

黒ラブ教授の口癖「ニュートリノ!」に大爆笑の鳥取県代表鳥取県立米子東高等学校の選手たち
オンラインで選手にインタビューする黒ラブ教授
鳥取県代表の米子東高等学校 黒ラブ教授の口癖「ニュートリノ!」に大爆笑

優勝は東京都代表チーム!
キャプテンを中心につくり上げた最高のチーム

2022年4月25日、開会式と同じくオンラインで表彰式が開催されました。

来賓を代表して登壇した末松信介文部科学大臣は、昨年ノーベル物理学賞を受賞した眞鍋淑郎博士のエピソードを交えながら、「好奇心をもって粘り強くチャレンジし、本当に大事なことを見出す目を養ってほしいと思います。未知の分野に挑み、難題にぶつかった時に、自分でよく考え、まわりの人と協力しながら解決策を見出すことが重要です。将来、皆さんが世界で活躍することを期待しています」とメッセージを寄せました。また、黒ラブ教授からも「学んで笑える面白トークショー」と題したビデオメッセージが届き、「みんなの科学の知識をぜひ社会のために活かして欲しいと思っています。また、今大会を通して築いた、苦しい時に助け合える関係を大事にして欲しい」と熱く語りました。

黒ラブ教授からのビデオメッセージが映し出されたモニター
大会応援団の黒ラブ教授からメッセージ

緊張の成績発表では、分野ごとの成績最優秀校と総合成績上位10校が表彰されました。第11回全国大会の総合成績第1位は、東京都代表の筑波大学附属駒場高等学校。続く2位は千葉県代表 千葉県立東葛飾高等学校、3位は愛知県代表 海陽中等教育学校でした。

総合成績第1位の東京都代表筑波大学附属駒場高等学校の選手たち
総合成績第1位の学校に贈られるトロフィーとメダル
総合成績第1位に輝いた東京都代表 筑波大学附属駒場高等学校
おめでとうございます!
総合成績第2位の千葉県代表千葉県立東葛飾高等学校の選手たち
総合成績第3位の愛知県代表海陽中等教育学校の選手たち
2位は千葉県代表 千葉県立東葛飾高等学校
3位は愛知県代表 海陽中等教育学校
おめでとうございます!

表彰式直後、筑波大学附属駒場高等学校と電話をつないで優勝の喜びを聞きました。「優勝と聞いた時にはめちゃくちゃ嬉しかったです。今は、徐々に実感がわいてきていて、初優勝して学校の歴史に新たな1ページを刻めたなという思いです」とキャプテン。チームメイト全員に感想を尋ねると、「キャプテンがチームを引っ張ってくれたから優勝できました」、「キャプテンが頑張っている背中を見て、僕も頑張れました」、「担当の地学分野をリードしてくれたのはもちろん、僕らにもアドバイスをくれました」とキャプテンへの信頼の大きさが伺えました。キャプテンには、中学2年生の時に参加した科学の甲子園ジュニア全国大会で苦い経験があったといいます。「今思うと、当時の僕は、何となく興味がある程度で参加していました。その結果、成績が振るわず、チームメイトが泣いてしまいました」。自分のふがいなさを感じて、以来、もともと好きだった地学を絶対の得意にしようと取り組んできたそうです。その成果は、今回分野別表彰で地学1位に輝いたことにも現れました。こうした姿がチームメイトを引っ張ったようですが、「僕は、逆にチームメイトに背中を押してもらっているのです」とキャプテン。そして「このメンバーなら優勝もあり得るかも」と思い、1週間ほど前からインタビューで何を話そうか考えていたと明かしてくれました。

メンバーからは、「全員が複数教科を得意としていて、お互いにアドバイスをしたり、ミスを発見し合ったりできたことが勝因だと思います」「もともと仲は良かったですが、競技で互いに助け合うことで、さらにわかり合えたと感じています。自分の周りにはすごい人がいることに、改めて気付きました」という言葉も聞かれました。個々人の実力の高さとチームワークによって手にした今回の優勝ですが、このチームがますます力を付けて行くことは間違いないでしょう。

表彰式当日から4日間は、全国の代表選手同士による「オンライン交流」の場が設けられました。同世代のよきライバルとの出会いや交流が、将来どのような形で実を結ぶのかが楽しみです。今大会は、一堂に会することは叶いませんでしたが、それぞれの場所で互いの力を高め合い、科学を楽しんでいる姿が印象に残る大会でした。「科学の甲子園 全国大会」に、新たな歴史がまたひとつ刻まれました。

第11回科学の甲子園全国大会を支援してくださった協働パートナー一覧
協働パートナーの皆様、応援およびビデオメッセージをありがとうございました!

第12回科学の甲子園全国大会は、令和5年3月下旬に茨城県つくば市で開催予定です。
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況により、変更となる場合があります。