国立研究開発法人 科学技術振興機構

第1回全国大会ダイジェスト・レポート

科学の力をチームで競う、363名の科学好きたちの祭典

全国の高校生らがチームを組んで科学の問題解決能力を競う「第1回 科学の甲子園全国大会」(主催・独立行政法人科学技術振興機構[JST])が、3月24日~26日にわたって兵庫県立総合体育館で開催されました。5,000名以上が参加した各都道府県の選考を勝ち抜いた代表47チームと特別枠での選考チーム、合計48チーム、363名が、科学に関する知識とその活用能力を駆使して5つの競技に挑戦しました。3日間の大会の模様をダイジェストでお届けします。

チームの力を結集して、筆記競技や化学と生物の実験課題に挑戦

開会式ではまず、川上伸昭JST理事と大西孝兵庫県教育長が、参加選手たちに激励の言葉を述べました。続いて徳島市立高等学校の朝井勇晶(あさい ゆうき)さんが「『困難は分割せよ』というデカルトの言葉があるように、一人ではなくチーム一丸となってベストを尽くしたい」と選手宣誓し、3日間の大会がスタートしました。

選手宣誓をする選手
【選手宣誓】

大会初日24日、最初の競技は各チーム6名が参加する筆記です。科学の甲子園は、5つの競技すべてがチームで協力して問題を解く団体戦。筆記競技でも、各自の得意分野を生かした役割分担やコミュニケーションなどのチームワークが求められます。最初の競技とあってやや緊張気味の選手たちでしたが、互いに相談をしながら問題を解いていきました。
午後は、各校3名ずつのチームに分かれて2つの実験競技に取り組みました。実験競技①は、「ヘスの法則」を用いてマグネシウムの燃焼熱を求める化学の問題。競技②は生物の問題で、植物組織の標本をつくり、デジカメで撮影した顕微鏡像から植物種の判別や構造の識別などを行いました。

額を寄せ合って筆記競技に取り組む選手たち
【筆記競技】
白衣を着て実験競技に取り組む選手たち
【実験競技】

ものづくりとコミュニケーション力が問われる総合競技

翌25日、大会2日目は3名ずつのチームで2つの総合競技に挑戦しました。この競技では、科学的な技術・知識を活用し、ものづくりやコミュニケーションの能力も生かして課題解決を図ります。
「甲子園の土」と題した総合競技①では、規定の大きさの段ボールを材料にできるだけ多くのカラーサンドが入る容器を作成し、カラーサンドの質量で順位を決めます。各チームとも数学に基づく精密な設計図を描き、手分けして容器を制作。慎重に砂を詰め、ジャッジの前での計量に臨んでいました。

会場に積み上げられたカラーサンド
【カラーサンド】

総合競技②は「クリップモーターカー・フォーミュラー1」。磁石やエナメル線でつくったモーターで模型自動車を走らせ、コース上で速さを競います。ルールが事前公開され準備万端で挑んだ各チームでしたが、細かな調整が思いのほか難しかった様子。コースに出てもうまく進まなかったり、途中からバックしてしまうなどのハプニングもあり、観客席からも大きな歓声と拍手が上がっていました。

総合競技 1 に取り組む選手たち
【総合競技①】
自作のモーターカーを走らせる選手たち
【総合競技②】

午後には、2010年ノーベル化学賞受賞者であり科学の甲子園の応援団長である、根岸英一先生による講話がありました。自身の研究概要などを紹介しながら、「21世紀を救うのはサイエンス。とりわけ化学の力が重要」と強調した根岸先生は、「自分の好きな分野を突き進んで、発見する喜びを追求してほしい」と高校生たちにエールを送りました。
競技終了後の表彰式では、大会実行委員長の中村道治JST理事長が「みなさんがチームワークを発揮して問題に取り組む姿に感銘を受けた。この場から多くの才能が羽ばたくことを期待する」とあいさつ。続いて、金澤和夫兵庫県副知事が、「兵庫県が科学好きの高校生たちの聖地になるよう、今後も県として大会を盛り上げていきたい」と述べました。

科学の甲子園の応援団長を務める根岸英一先生による講演
【根岸英一先生】

初代優勝校の栄誉は、埼玉県代表 県立浦和高等学校チームに

表彰式ではまず、各競技の成績優秀校などに協賛企業から企業賞が贈られました。全競技の得点を加算した総合成績では、埼玉県立浦和高等学校チームが優勝、第2位は滋賀県立膳所高等学校チーム、第3位には愛知県立岡崎高等学校チームという結果となり、それぞれメダルやトロフィーが授与されました。
優勝した浦和高校チームは、化学や生物、物理などの部活動メンバーで結成した有志のチーム。県代表決定後は、埼玉大学の協力を得て実験課題などの練習を重ね、本大会に臨みました。キャプテンの原雄大(はら ゆうだい)さんは、「勝因はチームワーク。一人ひとりの得意分野を生かして戦えました」と振り返ります。
メンバーの一人が体調不良で出場できないアクシデントがありながら、「睡眠や食事の時間を削って全員で対策を練った」(引率の佐々木肖子教諭)という7名。チーム力で競う本大会の初代チャンピオンにふさわしい絆の強さを見せてくれました。浦和高校チームは、今年5月に米国で開かれるサイエンス・オリンピアドに特別参加します。

文部科学大臣賞を授与する大臣と優勝した埼玉県代表チーム
【表彰式】
登壇した総合成績上位チームの頭上に舞う紙吹雪
【表彰式】

科学好きの生徒たちや科学教育の担い手が交流する場も

本大会は、科学好きの高校生たちや、科学教育を支える人々がつながる場でもあります。競技後のフェアウェルパーティやエクスカーションでは、異なる代表チーム同士で談笑する姿も多く見られ、参加者にとっては新たな仲間をつくる機会になりました。
また大会2日目には、協賛企業の担当者と各都道府県教育委員会の指導主事らが意見交換する交流会を実施。美馬のゆり公立はこだて未来大学教授による司会進行で、理系人材育成に向けた産学官の連携のあり方などを話し合いました。
最終日に実施されたエクスカーションでは、コースに分かれて兵庫県内の科学技術関連施設などを見学。世界最高水準のスーパーコンピュータ「京」を擁する理化学研究所計算科学研究機構や惑星科学研究センターなどで、科学技術研究の最先端を体験しました。

甲子園で科学好きな仲間に出会えた選手たち
【フェアウェルパーティ?次回ここに集まるのはだれ?!】

科学好きな生徒たちのための、新たな大会として生まれた「科学の甲子園」。その第1回全国大会はこうして幕を閉じました。第2回全国大会は、平成24年度に再び兵庫県にて開催される予定です。次はどんなチームが大会を沸かせてくれるのか、期待が高まります。