「面白い人たちに会いに行く」で沖縄を飛び出して
寄稿:2023年7月
- 渡嘉敷 直之さん
- 東北大学病院 脳神経内科
(第2回科学の甲子園全国大会 沖縄県代表)
第2回科学の甲子園全国大会に沖縄県代表チームで出場させていただきました、渡嘉敷直之と申します。
初の「研究活動」と県外の高校生との交流
全国大会においては事前公開されていた「灘の酒」と「クリップモーターカー」の2種目に出場しました。前者はアルコール発酵での収率を競う種目で、後者はいかに早く完走できるクリップモーターカーを工作するかという競技です。
もちろん授業でも実験は多くありましたが、目標に向け自分たちで一から仮説を立て実験し、結果から考察し次の実験へつなげていく、という「研究」といえる活動をしたのはこれが初めての経験でした。最初のうちは頭の使い方も慣れていないため次の一手につながるような実験計画も立てられませんでしたが、準備を進めるうちに「次はこうしてみよう」「あれを試してみよう」とあれこれ話しながら楽しんで実験をするようになっていました。
そしていざ本番。全競技終了後に他のチームの人たちと話をして、自分たちとは全く違うアプローチでの実験計画や自分たちが解決できなかった問題への対策を聞けたことが一番の思い出になっています。チームメンバーも自分以上に優秀な同期が集まっていましたが、県外にはこんなにも優秀で面白い発想をする同世代の人がいるのか、今後も彼らと競い合うことができたらどんなに面白いだろうかと刺激を受けました。
勢いあまって沖縄から東北へ
科学の甲子園での経験から「県外のいろいろな人たちと交流したい」「研究の世界にも携わってみたい」と思い、沖縄から遠く離れた仙台の東北大学医学部へと進学しました。
医学部の生活は他学部と違い、座学!試験!!病院実習!!!国家試験!!!といった生活で、理系といえども研究の機会は少なめな印象だと思われます。ですが、東北大学は他大学よりも研究室配属の期間が長かったり、カリキュラム外での研究室への学生の受け入れをしていたりと、学生の研究活動へのハードルが低く、自分自身も授業とは別で研究室に通い実験する生活を送っていました。学生時代に行った研究室通いでの、実験を行うために先行研究を調べたり、うまく結果が出なくて試行錯誤したりする経験は、現在の臨床医の立場でも、診断を付けるべく稀少疾患の文献を探したり、治療経過が芳しくない場合に何が原因でどう解決すべきか考えたりする下地になってくれたと感じています。
研究室以外にも医学部の様々なイベントに顔を出していましたが、東北ではやはり「沖縄出身」の4文字はきっかけ作りとして強すぎるカードでした。どこに行っても「沖縄から来た」で盛り上がり、そこから話が派生して別のイベントなどに紹介してもらい、またそこで新しい人と出会うという繰り返しで、勢いあまってでも沖縄を飛び出たおかげで貴重な経験をたくさんすることができました。
科学の甲子園への参加も東北への進学も、根本は面白そうという単純な動機で挑戦してきました。その結果、自分が想像すらしていなかった人との出会いや経験につながっています。おそらく今後も、様々なバックグラウンドを持つ患者さんや病態がまだ解明されていない疾患に出会いながら、「面白そう」と興味を持って医療や医学に貢献していけたらと思います。