第14回全国大会ダイジェスト・レポート
カラフルなドクターコートをまとい、
全国47都道府県の科学好き高校生が“つくば”に集結
2025年3月21日~24日の4日間、「第14回科学の甲子園全国大会」が茨城県つくば市で開催されました。メイン会場となるつくば国際会議場には、各都道府県代表選考(717校8,158名が参加)を勝ち抜いた47校361名が集結。それぞれ6~8名でチームを組み、カラフルなドクターコートをまとって科学に関する知識や技術、発想力を競い合いました。

各校思いっきりアピールした「開会式」
開会式は、司会者の「第14回科学の甲子園全国大会」に続く参加者全員での「開幕!!」宣言で始まりました。プログラムのメインとなる出場校紹介では、北から順に各校の選手全員がフラッグを手にステージに登場。個性あふれるポーズと意気込みを披露し、観客を沸かせました。




ポーズを披露する選手たち
その後の主催者挨拶では、国立研究開発法人科学技術振興機構の橋本和仁理事長が、科学の甲子園を通じて好奇心を持ち、自ら学び、課題に挑戦する探究心と想像力を持った若者の育成を目指すと述べ、「これからの時代を共に切り開く仲間を作っていってほしい」と選手たちを激励しました。続いて、開催地を代表して茨城県の大竹真貴産業戦略部長と五十嵐立青つくば市長が歓迎の挨拶を述べました。
選手宣誓は、事前抽選で決定した長崎県代表の選手2名が行いました。小浦節子審査委員長の前で「私たちの挑戦が人類の願いに応えられるように、そして未来の科学技術の発展につながることを願い、ここに集まった仲間と共に精一杯この場を楽しみ、全力で挑みます」と誓い、2日間にわたって繰り広げられる科学の熱い戦いが幕を開けました。

開会式後には早速、筆記競技が行われました。筆記競技には各チーム6名が参加します。学校の授業などで習得した理科、数学、情報分野の知識をどう活用するかが問われる問題を前に、選手たちは互いに声を掛け合いながら協力して取り組みました。


2日目は、つくばカピオで実技競技3種目が行われました。会場で競技を観覧できるこの日は朝から一般観覧受付前に長蛇の列ができ、保護者や出場校の先輩、後輩などが熱心に見守る中、選手たちは競技ごとに出場メンバーを編成し果敢に挑みました。
現代の必需品、スマホに隠されたセンサーの秘密を探る
実技競技①は「スマホのセンサー」と題した物理分野からの出題です。今やあらゆる世代の人々にとって必要不可欠なアイテムとなっているスマートフォンですが、その中にはさまざまなセンサーが搭載されていることをみなさんは知っていますか。今回は、それらのセンサーのうち最も活用されている加速度センサーを題材とした問題が出題されました。
まず、加速度センサーが見える状態の実験セットを用いて様々な加速度で値を計測し、加速度の性質を見出します。センサーに加速度を生じさせる方法として使用したのは、手回しロクロ。手回しロクロの上に加速度センサーを固定し、ロクロ上に置いた模様とタブレ端末のカメラ機能を利用して、回転数を測定しました。その後、実際のスマートフォン同様、加速度センサーが見えない状態でどこにセンサーがあるのかを探し出しました。




手動PCRによりウイルスのDNAを「見える化」せよ!
実技競技②「世界最大のウイルスを探せ!」は、2019年末に初めて報告され、2020年以降世界的なパンデミックを引き起こした新型コロナウイルスと、その脅威に立ち向かう科学技術を追体験するような競技でした。
競技開始直後、選手たちがまず向かったのはサンプルとなるマイクロチューブを回収するフィールド。用意された5種類(海水、沼の泥、水道水、降ってきた雨水を貯めたコップの水、河川敷の土壌)の環境の中から、パンドラウイルスのDNAが入っていそうなマイクロチューブを回収します。



その後選手たちは、そのDNAを手動のポリメラーゼ連鎖反応(PCR=polymerase chain reaction)で増幅させる実験に取り組みました。パンデミック時の新型コロナウイルス感染確認の際にもよく耳にしたPCRは一般的に、サーマルサイクラーという予めプログラムされた温度設定を自動で行う器械で行います。しかしこの競技では、3つの温度(98℃、55℃、72℃)を手動で管理しなくてはいけません。さらに、温度域ごとに決められた時間で試料を反応させることを30サイクル行います。この温度管理が実験の成果を大きく左右するため、タイムキーパー係、温度管理係、反応係と3名の強いチームワークが求められました。








連携しながら実験を進める選手たち
そして最後は、増幅したDNAをアガロース電気泳動という手法で分離・確認します。確認できたバンドをタブレット端末のカメラで撮影して提出するとともに、その結果について考察しました。マイクロピペッターでごくわずかな量のDNAサンプルを小さなウェル(穴)に注入するなど、学校での実験ではあまり扱うことがない高度かつ細かな作業も求められるこの競技を通して、選手たちは現代分子生物学の研究を堪能することができました。
アイデア満載のユニークなフライホイールカーが勢揃い!
実技競技③は「フライホイール大作成~回転エネルギーを操ろう!~」。決められた材料で事前に製作したフライホイールカーを会場に持ち込み、大会当日に示された目標タイムにどれだけ近づけられるかを競う「制御レース」と、規定の積載物内のボールを落とさずにいかに早く障害物のあるコースを完走できるかを競う「バンプレース」の2つの予選レースに臨む競技です。今回は3Dプリンタで作った部品を使用することが認められ、会場には工夫を凝らした多種多様な機体が揃いました。また、2024年12月に開催された「第12回科学の甲子園ジュニア全国大会」で優勝した茨城県代表チームの6名も特別参加しました。








レースに臨む選手たち
成績上位12チームによる決勝レースは、予選時と異なる障害物を設置した「バンプレース」1回のみです。各チームは各障害物を確認しながら機体の最終微調整を行い、レースに臨みました。

この競技で見事第1位の成績を収めたのは、長野県代表の長野県諏訪清陵高等学校。受賞チームが製作した機体は、コースに対して平行に設置したフライホイールと、ボールを乗せた積載物が滑らかにスイングするユニークな構造が特長です。競技終了後に前方ステージで行われたインタビューでは、「チョー気持ちいい!」とオリンピック選手と同じ台詞で喜びの気持ちを表し、選手自ら機体製作時に工夫したポイントなどを説明しました。
東京都代表の東京都立小石川高等学校が激戦を制し、初優勝!
大会3日目の午後は表彰式が行われ、東京都代表の東京都立小石川中等教育学校が見事初優勝の栄誉に輝きました。司会者から勝因を問われたキャプテンは、「3つの実技競技にメンバーの特性をうまく合わせ、役割分担して取り組めたことがよかったと思います」と、涙を浮かべる仲間の顔を順に見つめながら笑顔で回答。メンバーの中には科学の甲子園ジュニア全国大会や国際生物学オリンピックに参加した経験のある選手がいるといい、個々の優れた能力と高いチームワーク力が好成績につながったようです。同校の選手たちは、5月下旬に米国で開催されるサイエンスオリンピアドに日本代表として参加します。このチームがどんな活躍を見せてくれるか楽しみです。

東京都代表の東京都立小石川中等教育学校
また、表彰式では、茨城県教育委員会の柳橋常喜教育長が「この大会で仲間と共に得た経験を大切にしながら、人生に挑戦し続ける姿勢を持ち続けて頑張ってください」と選手たちにエールを送りました。あべ俊子文部科学大臣も、選手たちの健闘を称え「文部科学省は科学の楽しさや面白さを体験し、科学を学ぶことの意義を実感できる機会を多くの生徒に提供できるよう応援していきます」と述べました。
~こんな一コマも~
表彰式後には、協働パートナーをはじめ計17の企業・団体によるブース展示が行われました。選手たちは、実験や工作体験に参加したり、企業で働く研究者の方々と意見を交わしたり、最先端の機器に触れたりすることで多くの刺激を得ることができました。



また、フェアウェルパーティーでは、初の試みとして、過去の科学の甲子園全国大会に参加したOB・OGチームと、実技競技③で第1位の成績を獲得した長野県代表チームによるエキシビションマッチが行われました。関東と関西の2チームに分かれて機体の製作、試行を重ねてきたOB・OGチームでしたが、全選手が間近で見守る中行われたレースでは、見事長野県代表チームが完全勝利を収め、レース後も各機体を囲みながら熱心に質問を投げかける選手の姿が見られました。




応援ありがとうございました!