第15回全国大会ダイジェスト・レポート
全国47都道府県の科学好き高校生が“つくば”に集結
科学の知識と活用力を4つの競技で競い合う
2026年3月20日~23日、「第15回科学の甲子園全国大会」が茨城県つくば市で開催されました。全国大会出場をかけた各都道府県代表選考には、697校7,892名の高校生らが参加。予選を経て選ばれた47校367名がメイン会場であるつくば国際会議場に集い、それぞれ6~8名でチームを組んで科学に関する知識や技術、その活用力を競い合いました。
アッピンの声援を受けて、全選手がチームごとにステージに登場
司会者の「第15回科学の甲子園全国大会」に続く、参加者全員での「開幕!!」宣言で始まった開会式。ステージ上のアッピンから選手たちに向けて綴られた温かなメッセージが司会者に読み上げられると、今度は選手たちがチームごとにステージに登場し、個性あふれるポーズや意気込みを披露しました。




ポーズを披露する選手たち
主催者挨拶では、国立研究開発法人科学技術振興機構の橋本和仁理事長が、生成AIをはじめとする情報科学の目覚ましい進展や昨年ノーベル賞を受賞した2人の日本人研究者について触れ、「不確実性の高い世界にあっても、深く学び、自ら問いを立て、創造性をもって挑戦する力はどの時代にも通用します。どうかこの大会で存分に力を発揮してください」と選手たちを激励しました。続いて、茨城県の砂押道大産業戦略部長と五十嵐立青つくば市長が、開催地を代表して歓迎の挨拶を述べました。
選手宣誓の大役を務めたのは、香川県代表の選手2名。小浦節子審査委員長の前で「科学の真理を追い求める仲間たちとともに、この場に立てることを誇りに思います。お互いのことをリスペクトし合いながら正々堂々と最後まで考え抜くことを誓います」と宣言し、2日間に及ぶ科学の熱い戦いが幕を開けました。

開会式後には早速、筆記競技が行われました。筆記競技には各チーム6名が参加し、2時間かけて理科、数学、情報分野の難題に挑みます。選手たちは、学校の授業や自らの学びによって習得した知識をうまく活用、組み合せながら、協力して解答を導き出していきました。


2日目は、つくばカピオに会場を移して、実技競技が行われました。実技競技は会場で直接観覧・応援ができることもあり、この日は、朝から一般観覧受付前に長蛇の列ができました。多くの保護者や出場校の先輩、後輩などが熱心に見守る中、選手たちは3つの実験や工作競技に取り組みました。
海の波を水槽に再現し、その特性を解き明かす
実技競技①は「海の波の速度の不思議」と題した地学分野からの出題です。海の波を題材とした2つの課題を通して、波を発生させる工夫や波長・位相速度(波が進む速度)の測定、密度成層の作成などの技能を確認するとともに、海の波の不思議について探究しました。
一つ目の課題は、大型水槽の水面に海面の波を模した表面波を作り、その波長と位相速度を測定するというものです。さらに、水面に浮かべた小さな粒の動きを観察することで、水粒子は移動せずにエネルギーが伝わっていくという波の性質を理解し、サーフィンで長く波に乗り続けるにはどうしたらよいかを考えました。



もう一つは、各実技卓に用意された小型水槽を使って内部波を測定する課題です。小型水槽に着色した真水と濃度5%の食塩水で成層をつくり、境界面に内部波を発生させて観察しました。そして、一つ目の課題の結果と比較し、成層の密度差(大気と海水、真水と海水)で位相速度がどのように変わるかを考察しました。



8種類の白色粉末特定の鍵は「イオン」?!
実技競技②「イオン交換エクスプレス」は、浄水器などに用いられているイオン交換樹脂と、高校化学ではおなじみの実験である中和滴定を組み合わせた手法で未知の物質や溶液の濃度を特定するという競技でした。
本競技で使用したのは、内部に水素イオン(H⁺)を有する陽イオン交換樹脂。競技ではまず、シリンジにイオン交換樹脂を詰め、上から溶液を流すことでイオン交換を行う装置(イオン交換カラム)を選手自ら作成し、硫酸銅(Ⅱ)水溶液の濃度測定と、8 種類の化合物(白色粉末)の特定に臨みました。






協力しながら実験を進める選手たち
白色粉末の水溶液濃度をどうするかも、自分たちで考えて調製します。そして、その調製した水溶液を用いてイオン交換および中和滴定を行います。得られた滴定量の計算によってもとの化合物の式量が求められるため、その値を手がかりにして化合物を特定していきます。各チームはイオン交換と中和滴定の実験をうまく分担しながら繰り返し、得られた値について議論しながら解答を求めていきました。
TR装置から飛ばす小さなリングにチームの想いを込めて
実技競技③は毎年、全国大会開催前に競技内容を各チームに公開する「事前公開競技」として実施されています。今回の競技は、電磁誘導の原理に基づくトムソンリング(TR)を題材とした「目指せ!電磁力でカップイン」。指定された場所に置いたTR装置からアルミニウム製のリング(ジャンプリング)を飛ばし、ゴルフ場に見立てたコースの約4メートル先にあるカップにどれだけ多くのジャンプリングをカップインさせることができるかを競いました。
大会当日に向けて、事前送付された物品を用いて瞬間的に大電流を流すTR装置とジャンプリングを何度も試作し、検証・改善を積み重ねながら戦略を立ててきた選手たち。細く軽いジャンプリングをとにかくたくさん飛ばすか。それとも飛ばすジャンプリングの数を減らしてでも正確性を重視するか。各チームが限られた時間で長さや太さの異なる多様なTR装置を見事完成させると、持ち込んだジャンプリングを実際に飛ばして最終調整を行い、本番チャレンジに臨みました。




各自割り当てられた作業に集中して取り組む
また、この競技には2025年12月に開催された「第13回科学の甲子園ジュニア全国大会」で優勝した千葉県代表チームの6名も特別参加しました。


各チーム2回ずつ行われた予選チャレンジ後、成績上位8チームと同等の好成績を収めたジュニア代表チームによる決勝チャレンジが行われました。予選と異なるカップの中心までの距離が発表されると、9チームはすぐにTR装置の微調整を開始。張り詰めた空気が漂う中、ジャンプリングが見事カップインした音が響き渡ると、会場からは大きな歓声が挙がりました。



岡山県代表の岡山県立岡山朝日高等学校が県勢初の優勝を獲得!
3日目午後に行われた表彰式では、各競技で好成績を収めたチームが順に発表・表彰されました。総合優勝を獲得したのは、岡山県代表の岡山県立岡山朝日高等学校。発表の瞬間は驚きで固まってしまった選手もいましたが、ステージ上で優勝トロフィーや優勝旗、金メダル等を受け取ると、徐々に笑顔がこぼれ受賞の実感が湧いてきたようです。司会者から今の気持ちを問われると、「普段の努力の結果が出てすごく嬉しいです」と述べ、勝因については「やはり実技競技③で第1位を取れたこと。みんなが協力してお互いに弱点を補い合えたことが大きかったかなと思います」と回答しました。
岡山県として初めての優勝を手にした同校の選手たちは、5月下旬に米国で開催されるサイエンスオリンピアドに日本代表として参加します。このチームがさらにどんな活躍を見せてくれるか楽しみです。

岡山県代表の岡山県立岡山朝日高等学校
~こんな一コマも~
表彰式後には、協働パートナーをはじめ計18の企業・団体によるブース展示が行われました。産学官が一体となって開催する科学の甲子園全国大会ならではのプログラムで、選手たちはもちろん、一般来場者も参加することができます。各ブースでは、工作体験や実験ショーのほか、企業で働く研究者の方々と直接意見を交わしたり、最先端の機器に触れたりすることができる機会が設けられ、科学と実社会・実生活との関わりを深く学ぶことができました。



最終日の夜に開かれたのは、大会を締めくくるフェアウェルパーティー。皆リラックスした表情で交流を楽しみました。また、パーティー中盤には第14回大会で好評を得たエキシビションマッチを今回も開催。実技競技③で第1位の成績を獲得した岡山県代表チームと過去の科学の甲子園全国大会に出場したOB・OGチームに加え、今回は協働パートナー代表として株式会社学研ホールディングスチームが参戦しました。選手たちはOB・OGチームや協働パートナーチームが製作したユニークなTR装置やジャンプリングに興味津々。見事岡山県代表チームが勝利を収めると、間近でチャレンジを見守っていた全選手から健闘を称える大きな拍手が出場チームに贈られました。



応援ありがとうございました!
第15回科学の甲子園全国大会は、連携自治体や協働パートナー、各都道府県教育委員会をはじめとする多くの方々のご支援・ご協力により無事会期を終えることができました。
第16回科学の甲子園全国大会は、2027年3月19日~22日に今大会と同じ茨城県つくば市で開催する予定です。
