【特別編】第3回全国大会 特別交流会
「グローバルに活躍する理系人材育成に向けて」企業と教育関係者が議論
~第3回 科学の甲子園 全国大会 産官学特別交流会~
大会2日目には、グローバルに活躍する理系人材の育成をテーマにした、産官学特別交流会が開かれました。科学の甲子園協働パートナー(企業・団体)の担当者、出場校の引率教員、各都道府県の教育委員会関係者らが6つのグループに分かれ、これからの社会で求められる人材像と学校教育の役割、産官学の連携のあり方などを議論しました。
理系としてのキャリア・仕事をイメージさせる
グループ1(テーマ:ものづくりと人づくり、参加パートナー:株式会社 学研ホールディングス、パナソニック株式会社、株式会社リテン)では、理系人材の育成とキャリア教育との関連を中心に意見交換しました。高校教員からは、「今学んでいることが将来どう役立ち、どんな職業につながるのかなど、先を見据えた教育活動が必要になっている。実際に働いている人の言葉を聞き、仕事の現場を見る機会を生徒たちに与えたい」といった意見が出ました。これに対し企業担当者は、高校生のキャリア教育につながる支援も行っているので、積極的に活用してほしいと呼びかけていました。
また、高校段階では具体的にどんな力を身につけさせればよいかとの質問には、教育関連企業が回答。高校での学習内容はもちろん、社会に出てからも学び続ける態度や、「学び方」を身につけることが大切と提案しました。
グループ2(技術を通しての社会貢献、参加パートナー:ケニス株式会社、株式会社日立製作所)でも、企業で求められている人材と、高校の授業との関わりが議題になりました。企業からは、「自分の考えを他者にわかりやすく伝える力」や「人と社会に対する幅広い興味」を育ててほしいといった要望のほか、「高校段階での基礎学力の確実な定着が必要」という指摘もありました。
このほか、理系人材育成のためには「学校の先生方も科学への興味関心を高める必要がある」との意見に、都道府県教委の教員研修担当者も、科学に関する研修の必要性を感じると応じていました。
産官学の連携でつくる安心・安全な実験環境
グループ3(参加パートナー:株式会社講談社[Rikeko]、帝人株式会社、株式会社ナリカ)のテーマは、「女子生徒の理系進学」。海外では女性の理系進出が珍しくないため、日本で話題になっている「リケジョ」という概念自体がないといった報告に、教育関係者は興味深そうに聞き入っていました。
日本の学校現場では、女子の理系大学への進学にあたって「資格で選ぶ傾向が一部で見受けられる」と企業の担当者。進路指導を担当する高校教員には、「好きなことを学ぶことを基本に、さまざまな選択肢があることを生徒たちに伝えてほしい」と話しました。
「技術と安心・安全の重要性」を取り上げたグループ4(参加パートナー:株式会社島津理化、公益社団法人 日本理科教育振興協会、三菱電機株式会社)では、学校の理科授業の環境整備について、関連企業・団体と教育関係者が意見交換しました。
まず企業・団体側が、日本の学校の理科室の安全措置が欧米に比べて遅れており、リスク管理の強化が急務と説明。設備の不備だけでなく、教員の実験経験が少ないため安全対策がおろそかになりやすいという背景も指摘されました。
学校で揃えるべき安全装置・器具等については、「まずは安全メガネをかけることから始めてほしい」という提案が。教育関係者からは、生徒向けの啓発ポスターや教員対象の安全講習会などに関する質問が相次ぎ、企業や行政、学校現場の連携で、安全への意識を高めていく必要があるという点で一致しました。
高大連携+企業を軸に、地域発のモデルケースを
グループ5(参加パートナー:CIEE[ETS TOEFL]、株式会社UL Japan)は、グローバル人材の基礎スキルとなる「語学力とコミュニケーション能力」をテーマに議論しました。
英語コミュニケーション能力テストを管轄する団体等が、「さまざまなことに積極的にチャレンジし、自分の意見を臆せず言える生徒を育成してほしい」、「グループ内での自らの役割を意識しながら、多様な人々と議論ができるスキルを育てることが重要」と教育関係者に提言。
また、国内で実践できるグローバル人材の育成法として、「通常の企業見学だけでなく、実際の仕事に関われるインターンシップを有効に活用してほしい」と呼びかけました。
グループ6(テーマ:Intel ISEF[21世紀型スキル]、参加パートナー:旭化成株式会社、株式会社インテル)は、理系人材の育成に向けた産官学の連携のポイントを話し合いました。
21世紀型スキルは、科学の甲子園や国際科学技術コンテストで求められるスキルと重なる部分が多く、こうしたイベントが人材育成の核になり得るとの提言に対し、「各地域で国内大会や国際大会にチャレンジする素地をつくることが課題」、「地方大会や関連イベントを、国や企業がサポートしてもっと盛り上げてほしい」といった意見が出ました。
一方、高校・大学間の連携に企業も関与することで、生徒も教員も学ぶ機会が増え、グローバル社会に直結するスキルの育成ができるという声も。今後の方向性として、地域の企業・行政・学校が連携するプロジェクトをつくり、モデルケースとして全国に普及させていくなどのアイディアが提示されました。
交流会後半では、各グループでの議論の結果をファシリテーターが報告し、全体で共有。主催者を代表してあいさつしたJST理数学習支援センター才能育成担当の鬼島正和主任調査員は、「企業の教育支援の取り組みが社会全体に普及し、子どもたちのレベルアップにつながるためには、教育現場と企業がさらに連携を深めることが大切。今日の出会いが、そのきっかけになれたら幸いです」と述べました。