第12回全国大会ダイジェスト・レポート

全国から“科学者のタマゴ”282名が姫路に集結!
3つの競技で科学の知識と活用力を競う

2024年12月13日~15日、「第12回 科学の甲子園ジュニア全国大会」が兵庫県姫路市の「アクリエひめじ」で開催されました。各都道府県で行われた代表選考には総計25,772名の中学生がエントリー。激戦を勝ち抜いた47チーム282名が一堂に会し、理科や数学などの複数分野に関する知識とその活用力を競い合いました。会場には選手の家族や友人も多く駆けつけ、熱気あふれる3日間となりました。

選手全員の集合写真
各都道府県大会を勝ち抜いた47チーム282名

ドクターコートをまとって臨んだ開会式

集合写真を見て気づいた方がいるかもしれませんが、全国大会では例年、各チームが予め希望したカラーのブルゾンを着用してプログラムに参加します。しかし今回は、「科学」の全国大会らしく、パステルカラーのドクターコートが用意されました。ドクターコートに身を包んだ選手たちは、まさに次代の科学技術を担う「科学者のタマゴ」。大会後もさまざまな機会で活用し、科学とともに自身の夢を切り拓いていってほしいという大会関係者の願いが込められています。

ステージ上に立つ男性と拳を掲げる観客席の人たち
選手団全員による拳を掲げての開幕宣言

12月13日午後に行われた開会式ではまず、司会による「第12回科学の甲子園ジュニア全国大会」の掛け声に続いて、選手全員が拳を掲げて「開幕!」を宣言。その後、前回大会から完全復活した恒例のステージパフォーマンスとなり、全47チームが南から順に登場しました。地元の特産品や観光名所などのイラスト、クラスメートたちからの応援メッセージで埋め尽くされたチームフラッグにもそれぞれの個性が光ります。各チームが全国大会に対する意気込みや決めポーズを披露すると、会場からは大きな拍手や歓声が起こりました。

ステージ上でポーズを決める選手たち
各都道府県代表チームによるステージでのパフォーマンス

開会挨拶では、主催者を代表して国立研究開発法人科学技術振興機構の橋本和仁理事長が「皆さんには理科を好きになり、好奇心を持ち続けていただき、将来は人々の好奇心を刺激するような新たな知を発見したり、社会に役立つものを発明・発見したりできるような科学者になっていただきたい」と述べました。続いて、開催地である兵庫県の福山雅章中播磨県民センター長と姫路市の清元秀泰市長が登壇。県が誇る最先端の研究施設や姫路にまつわる戦国時代の逸話に触れながら、全国から集まった選手たちを歓迎しました。式の最後には、小浦節子審査委員長が富山県代表チームによる選手宣誓を受けて、3日間の大会の幕が切って落とされました。

選手宣誓をする男女2人
富山県代表チームによる選手宣誓

実技競技①:地球や宇宙の神秘に迫る壮大なサイエンス・ツアーを疑似体験

大会2日目の12月14日は、筆記競技と実技競技2種目に挑みました。

実技競技①は「二つのフロンティア~海から宇宙へ~」。この競技は、サイエンス・ツアーに参加した遠い未来の中学生3名が海洋と宇宙の不思議を体験するという設定で、地学分野に関する2つの課題に取り組みました。

実技競技1に取り組む選手たち
実技競技1の競技会場

一つ目は「海の中にも波がある」と名付けられた課題。河川が海に流れ込むところや極地で氷が海に溶けるところなどで発生する「内部波」という不思議な現象が題材となっています。競技では、着色した真水と食塩水で水槽内に密度成層を再現し、境界面に内部波を発生させてタブレットで撮影し、その波長や位相速度を測定しました。どのチームも層を作るところまでは比較的スムーズにできていましたが、その後、波を発生させようとして層をかき混ぜてしまったり、測定に必要な事前準備が不十分だったりと、タブレットでの撮影に苦戦する姿も。3名でうまく作業を分担し、正確かつ効率よく測定・考察する技能が求められました。

実技競技1に取り組む選手たち
水槽内に密度成層を再現し、内部波を記録する選手たち

二つ目の「惑星旅行:私たちはどこにいる?」は、机上に用意されたキットを用いて天体望遠鏡を製作し、競技会場内に設置された二つの惑星画像を観察する課題でした。一般的に、天文に関する問題は地球から天体を観測した結果をもとに考察を進めます。しかしこの競技の難点は、観測地点が地球以外の太陽系惑星の衛星軌道上にある宇宙ステーションに設定されていること。そのため選手たちは、地球以外からだと惑星の見え方がどう変わるのか、どのような条件で日食が見られるのか、太陽系の惑星配置をもとに自らの視点を宇宙レベルまで広げて解答を導き出しました。

また、今回の競技は、惑星観測に不可欠な天体望遠鏡の組み立てや操作を通じて、天体望遠鏡の基本的な仕組みを学ぶことができるのもポイントです。競技後には、完成した天体望遠鏡を記念品として持ち帰ることができると伝えられ、選手たちは嬉しそうに天体望遠鏡を胸に抱えて競技会場を後にしました。

天体望遠鏡をのぞき込む選手たち
製作した天体望遠鏡を使って惑星の正体を探る選手たち

実技競技②:工夫を凝らした台車や飛行物体が勢揃い!

昼食後に行われた実技競技②「スロープ・バンプ・ジャンプ!」は、斜面を下り降りる台車がストッパーにぶつかる勢いを利用して、台車に搭載した飛行物体を遠くに飛ばし、その飛距離を競う競技です。

実技競技2の競技会場
実技競技2の競技会場

競技に用いる台車(2台まで)と飛行物体(5個まで)を、製作規定の範囲内で指定された製作材料の中から自由に選択して製作します。事前に全出場チーム宛に競技内容をまとめた資料とともに競技物品が送付される事前公開競技であったため、各チームは本番の全国大会に向けて試行錯誤しながら飛行物体をできるだけ遠くに、かつ真っ直ぐに飛ばす工夫を検討し、準備を進めてきました。

チームで協力して台車を製作する選手たち
事前に準備してきたアイデアをもとに台車等を製作する選手たち

製作時間中には、2県の代表チーム各3名がインタビューを受けました。愛媛県代表チームは当初投石型の台車を想定していましたが、安定性や本番での再現性を意識して試行を重ねた結果、弓矢型に変更したといいます。一方の島根県代表チームも、試行錯誤を経てバネの弾性を利用した台車と飛行機型の飛行物を考案。また、全国大会についての感想を問われると「全国の科学好きが集まっているので、自ずと探究心が湧いてくるような気がしています。せっかく参加できたので、今まで支えてくださった先生方にも感謝しながらいい結果を出したいと思います」と語りました。

インタビューに応える選手たち
ライブ配信中のインタビュー中継に応じる選手たち

90分間の製作と試行を経て行われるチャレンジは各チーム5回。スタート台とその前方に設置されたフィールド(幅275㎝、奥行1,250㎝)で構成されるコースが競技会場内に設置され、最高距離を競う「ベスト部門」の記録と、上位4回の平均距離を競う「アベレージ部門」の記録によって順位を競いました。

5回のチャレンジでフィールドの終端フェンスをノーバウンドで越える記録を出すことができたのは、埼玉県、東京都、宮崎県、沖縄県の4チーム。一方で、想定の飛距離を出せずに頭を抱えるチームや思いがけずフィールドサイドの外に飛び出てしまったチームもあり、試行の成果を本番で再現することの難しさが伺えました。しかしながら、各チームのアイデアあふれる台車や飛行物体は見応えがあり、最後まで目が離せない競技となりました。

コースに設置された台車と選手たち
台車と飛んでいく飛行物体を熱心に見守る選手たち

茨城県代表チームが10年ぶり2度目の栄冠

12月15日の表彰式では、国立研究開発法人科学技術振興機構の次田彰理事と、兵庫県教育委員会の村田かおり教育次長による挨拶に続いて、あべ俊子文部科学大臣が「この経験は、将来皆さんが様々な分野で活躍する際の支えになることと思います」と選手全員にエールを送りました。
その後、各賞の受賞チームが順に発表されました。総合優勝は茨城県代表チーム。キャプテンは「『一位獲るぞ!』と言っていたけれど、本当に獲れるとは思っていなくて。すごく嬉しいです!!」と喜びを語りました。茨城県代表チームは、総合優勝に加え、筆記競技第2位、実技競技①第1位、さらに女子生徒3名以上を含むチームのうち総合成績最上位のチームに贈られる「女子生徒応援賞」を獲得しました。

仲間と抱き合う優勝チームと式典会場全景
表彰式での成績発表

表彰式後、茨城県代表チームの6名は優勝チーム記者会見に臨みました。科学の魅力や好きになった理由を問われると「父が科学者で、小さいころから身近に科学に触れてきました。科学を勉強することで何でもできるようになることが魅力だと思います」「私はすごくゲームが好きで『楽しい!楽しい!』と思ってやっていたら情報が得意になりました。その過程で科学も『わぁ、楽しい!』となって、いつのまにか科学の甲子園に出られました」「実験をする前に予想を立てますが、実験結果が出たときに予想を裏切られることがあります。このときに『悔しい』と同時に『面白いな』という感情がたくさん湧いてきて、それが理科を好きになったきっかけです」などと答えた選手たち。

また、引率の先生2名は「『目指すは優勝!』と言ってきたものの全国大会のレベルは高く簡単ではないと思っていましたが、大舞台に強いこの6名ならやってくれそうな気がしていました。私もとても嬉しいです」「一生懸命全国大会に向けて努力している姿を近くで見てきたので、本当に努力が報われてよかったと感じています。理科教育を広める我々として、基本を大事にしてこれからも理科教育に頑張っていきたいなと心の底から思えた瞬間でした」と振り返りました。

いずれの競技でも各選手が得意分野を存分に発揮し、好成績につなげられた6名。彼らは、2025年3月に開催される「第14回科学の甲子園全国大会」に特別招待されます。そこでも地元の地の利を生かして大いに活躍してくれることでしょう。

6人の選手と大会マスコット人形「アッピン」
優勝した茨城県代表チーム

第12回科学の甲子園ジュニア全国大会は、「科学のこころが広がり、友情の絆がつながる」の大会スローガンにあるとおり、全国の科学好きの中学生が科学に対する好奇心や学びを一層深めるとともに、新たな仲間とも出会い交流する大会となりました。第13回科学の甲子園ジュニア全国大会は2025年12月中旬に姫路市で行われる予定です。一人でも多くの中学生が全国大会出場を目指して、来年度の都道府県大会にチャレンジしてくれることを期待しています。

大会会場に設置された看板
協働パートナーの皆様、応援ありがとうございました!

〜こんな一コマも〜

初日の夜に行われたアイスブレイクでは、姫路市のご当地アイドルとして活躍する「KRD8」のメンバーがサプライズで登場。息の揃ったかっこいいダンスと歌を披露してくださったほか、その後のクイズ大会にも一緒に参加してくださり、会場は大いに盛り上がりました。

ステージでパフォーマンスを行う女性7人と観客席の選手たち
「KRD8」によるライブパフォーマンスやクイズを楽しむ選手たち

また、3日目の表彰式開催前には8つの協働パートナー企業・団体が会場内に体験ブースを出展。どの企業・団体も科学に対する興味・関心を刺激する工夫を凝らした企画を用意してくださり、選手たちはチームの枠を越えて、ロボットの操作対決や科学実験、セメントを使った工作などを楽しみました。

各ブースの展示を楽しむ選手たち
科学の面白さや社会とのつながりを体感できた多彩なブース展示