第11回全国大会ダイジェスト・レポート
観客席の家族や友人の声援を一身に受け
全国の中学生277名が姫路城下で科学の力を競う
「第11回 科学の甲子園ジュニア全国大会」が2023年12月8日~10日、兵庫県姫路市の「アクリエひめじ」で開催されました。各都道府県で行われた代表選考には総計26,369名の中学生がエントリー。激戦を勝ち抜いた47チーム277名が一堂に会し、科学の知恵や実践力を競い合いました。新型コロナウイルス感染症の拡大により、中止や分散開催を余儀なくされてから4年。会場には応援に駆けつけた家族や友人の姿が見られ、フェアウェルパーティーや協働パートナー企業によるブース展示などの交流イベントも復活するなど、ようやく大会本来の姿を取り戻しました。
4年ぶりのステージパフォーマンスに沸いた開会式
12月8日の開会式では、最初に全員で栄光のリングを使った光のパフォーマンスを行い、気持ちをひとつにしました。ステージパフォーマンスでは、全47チームが順番に工夫を凝らしたチームフラッグを手に登壇。思い思いのポーズをとってアピールすると、会場からは大きな拍手や歓声が起こりました。
開会挨拶ではまず、主催者である国立研究開発法人科学技術振興機構の橋本和仁理事長が「大会を通して科学への愛情を深めてほしい」と述べました。続いて、開催地である兵庫県の小林拓哉産業労働部次長兼国際局長と姫路市の清元秀泰市長が登壇し、「姫路城の世界遺産認定30周年の記念の年にようこそ!!」と全国から集まった代表選手たちを歓迎しました。式の最後には、小浦節子審査委員長が山口県代表チームによる力強い選手宣誓を受けて、3日間の大会の幕が切って落とされました。
実技競技①:君も植物分類学者だ!
大会2日目の12月9日は、筆記競技と実技競技2種目に挑みました。
実技競技①は「この葉何の葉、どこから来たの?」。3つのミッションと筆記問題で構成されるこの競技は、1人に1冊ずつ渡された植物図鑑と3名のチームワークが頼りです。ミッションIは、実物大の植物画像20枚の名称を図鑑で調べること。植物を特定するには、葉の形だけでなく縁の形状や枝からどのように出ているのかも重要な情報となるため、選手たちはみな写真の葉をじっくり観察していました。
ミッションIIは、会場内に設けられた“ミニ樹林”で採取した植物のさく葉標本をつくり、スケッチすること。ミニ樹林内にはよく似た樹木が4種類あり、採取すべき植物の特徴を覚えてきた選手たちを惑わせました。それでも、葉を手に取って観察したり、匂いをかいだりしながら、指示された植物を見つけ出していました。
真剣な眼差しで、切り取ってきた枝葉で植物の特徴がよくわかる標本をつくり、丁寧にスケッチする姿は、さながら植物分類学者のようでした。
最近では、植物の写真をインターネットで検索すれば瞬時に名称の候補がわかりますが、確定にはさらに詳しい検索が必要です。図鑑では似た植物の特長が分かりやすく紹介され、調べるほどに植物の多様性に驚かされます。競技後の選手からも「いろいろな植物を見られて面白かった」「風景に溶け込んでしまっていた植物を見る目が変わった」といった感想が聞かれ、図鑑にまとめられた先人の膨大な知恵や経験に感動したようでした。
実技競技②:アイデア光るマシンが力走
実技競技②の「プロペラマシン・バイアスロン」では、制限時間内に決められた材料と道具を使って、プロペラの動力で走るマシンを最大3台製作。製作したマシンをうまく使い分け、「走行距離部門」と「テクニカルコース部門」の2部門で競い合いました。
この競技では、車輪のような転がり摩擦を使って走らせてはいけないため、床と接地面との摩擦をどう減らして走らせるかが各チームの工夫の見せどころです。生配信でインタビューを受けたチームの選手たちは、「10台以上製作して試行錯誤しました。今日は、コースに合わせて微調整をして全力を出し切ってほしい」「メンバーを信じています」と競技会場にいるチームメイトにエールを送りました。
「走行距離部門」では、30秒の充電で15メートルの直線コースをどこまで走れるかを競い合いました。わずか数秒であっという間にコースを走り切るマシンがある一方で、途中で止まってしまうマシンもあり、会場の至る所から喜んだり悔しがったりする声が上がりました。
続いては、何回のチャレンジでゴールエリアに到達できるかを競う「テクニカルコース部門」です。障害物のあるコースを攻略するため、プロペラの回転の特性を生かして曲がりやすくしたり、障害物をすり抜けられるよう幅を狭くしたりと、マシンそのものを工夫するチームのほか、充電時間の長さによって進む距離を調整するチームもあり、チームごとの戦い方も見応えがありました。ものづくりの楽しさとその難しさを味わう貴重な経験となったようでした。
四国勢初 優勝は香川県代表チーム
12月10日の表彰式では、国立研究開発法人科学技術振興機構の塩崎正晴理事と、兵庫県教育委員会の村田かおり教育次長による挨拶に続いて、盛山正仁文部科学大臣が「未知の分野に挑戦する探究心と創造力を育んで、世界で活躍する人になってほしい」と選手全員にエールを送りました。
続いて、待ちに待った各賞の受賞チームが発表されました。優勝は香川県代表チーム。チームアピールにあった「讃岐うどんのような粘り腰」を全国の仲間に見せることができました。優勝トロフィーを手にしたキャプテンは、「夢のようです!!」と喜びを語りました。
3つの中学校の選手で構成された香川県代表チームは当初、チームワークに心配があったといいます。しかし、6人全員で取り組む筆記競技で最高得点を獲得。「問題は当日発表なので緊張していました。でも、問題を見てこれは3人で協力しなくては終わらないと思ったらすぐに団結できました」(実技競技①を担当した選手)、「マシンが1台動かなくなってしまって…僕が落ち込んでいたら、2人が『残るマシンで頑張ればいいんだよ』と励ましてくれて乗り切れました」(実技競技②を担当した選手)と振り返り、どの競技でもチームワークを大いに発揮できたことが伺えました。なお6名は、2024年3月に開催される「第13回科学の甲子園全国大会」に特別招待されます。そこでも、どんなチームワークを見せてくれるかが楽しみです。
第11回科学の甲子園ジュニア全国大会は、全国の科学好きの中学生が互いに切磋琢磨し、仲間となり、科学の面白さを再発見する大会となりました。第12回科学の甲子園ジュニア全国大会は2024年12月中旬に姫路市で行われる予定です。より多くの科学好き中学生が参加して、よりいっそう「科学のこころが広がり、友情の絆がつながる」大会になることでしょう。
〜こんな一コマも〜
2日目の夜に行われたフェアウェルパーティーでは、リラックスした雰囲気の中、仲間たちとの食事や吉本興業所属で神戸大学出身のお笑い芸人ネイビーズアフロさんによる特別漫才、さらに引率の先生方が出題するクイズで盛り上がりました。
3日目には、8つの協働パートナー企業・団体が選手たちに楽しんでもらおうと会場に体験ブースを出展。ロボットを操作して対戦したり、実験に参加したり、プログラミングを楽しんだり…。
この大会を通じて、科学に関する興味・関心を一層高め、科学好きの仲間を増やすことができました。