国立研究開発法人 科学技術振興機構

第1回全国大会ダイジェスト・レポート

ジュニア、初代優勝の栄冠は滋賀県チームに輝いた!

チームワークで勝利

全国の中学生が科学・数学の思考力や技能を競う「第1回 科学の甲子園ジュニア全国大会」が、2013年12月21日(土)~22日(日)、国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区)で開催されました。初開催ながら、代表選考には15,000名を超える生徒が参加。日本一を決める全国大会には、各都道府県で選抜された47チーム・281名が出場し、熱戦を繰り広げました。2日間の大会の模様をダイジェストでお伝えします。

科学の甲子園はチーム戦、一人では勝てない

記念すべき第1回の開会式
開会式で挨拶を述べる大会関係者
開会式の様子

「科学の甲子園ジュニア」(主催:科学技術振興機構〔JST〕)は、高校生を対象として2011年度より実施されている「科学の甲子園」の中学生版として、今年度初めて開催されました。競技形式を採用していますが、1位を決めることだけがその目的ではありません。記念すべき第1回大会のスローガンは「広げよう科学のこころ つなごう友情の絆」。大会を通して、科学好きの裾野を広げ、未知の分野に挑戦する探究心や創造性に優れた人材を育てることを目指しています。

全国大会は、筆記競技(1競技/300点)と実技競技(2競技/各300点)を行い、その合計点で順位を競います。科学の甲子園の大きな特徴は、「チーム戦」。1チームは6名で構成されます。競技の間、メンバー同士で会話することは許されているので、答えを相談したり、作業を分担したり、メンバー間で協力するためのコミュニケーションも大事です。

選手宣誓を行う宮城県代表選手
選手宣誓

初日は交流会も、科学好きの輪が広がる

初日の開会式では、古川黎明中学校の髙城龍馬さんから、心のこもった選手宣誓が行われました。髙城さんは、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県の代表。原発事故が起きたことで「今後科学がどう進むべきか、どうあるべきか、これからを担う私たちの世代に、大きな課題としてゆだねられています」と悩みつつも、それでも「科学はやっぱり楽しい」ということに気づいたといいます。「ともに楽しみましょう、科学の甲子園を。絶対に見せましょう、科学の底力を。全国に広げましょう、科学好きの輪を」と力強く訴えたのが印象的でした。(選手宣誓の全文はこちらをご参照ください

初日の最後には、立食パーティー形式の交流会が行われました。競技の本番は翌朝からということで、少し緊張した様子も見られましたが、そこは「科学好き」という共通項を持つ者同士。他チームのメンバーとも、すぐに打ち解けていたようです。他チームのメンバーは、ライバルであると同時に、「科学好き」の仲間でもあります。この大会で新しくできた友達はきっと、今後の人生において貴重な存在になるでしょう。

参加選手全員での記念撮影
交流会

筆記も実技も、知識の応用力が求められる

筆記競技は全6問。物理、化学、天文、生物、数学、情報など、幅広い分野から出題されてました。机の上の道具を使って実験する問題まであり、普通の「筆記試験」とはちょっと違いました。

筆記競技に取り組む選手たち
筆記競技の様子

実技競技は、2種類の競技が別会場で同時に行われるため、1チームが3名ずつに分かれます。どちらも制限時間は90分しかありませんので、3名でうまく役割分担ができるか、チームとしての力が求められます。

実技競技①は、古来からある和算の「油分け算」が課題でした。油分け算では、大きさの違う枡(マス)を使って、なるべく少ない手数で油を等分する必要があります。1問目は3つの枡を使う一般的な油分け算でしたが、2問目はなんと枡が4つに増えて3等分するという難問(最も少ない手数で9手)。油の代わりに「黒豆」(実際には直径6mmのプラスチック粒)を使いましたが、これだと容器の中に隙間ができやすいのでどうしても誤差が生じます。この誤差をできるだけ小さくすることもポイントになっていて、各チームで充填方法を工夫していました。

実技競技1に取り組む青森県代表チーム
実技競技①の様子
実技競技1に取り組む選手
「黒豆」と呼ばれたプラスチックの黒い球

実技競技②は、お風呂に入れる発泡入浴剤がテーマ。泡の出る入浴剤は寒い季節には人気があります。この泡は二酸化炭素。クエン酸と炭酸水素ナトリウム(重曹)を合わせて10gとし、最も多く二酸化炭素が発生する割合を求めます。たくさんの二酸化炭素を発生させるには、正確な実験を行って最適な配合を見つけ出すことがカギ。最後に、二酸化炭素をポリ容器の中の袋に集め、溢れ出た水の量から体積を推定したところ、最も多かったチームの値は約1.4リットルと理論値にも近く優秀な結果でした。

実技競技2に取り組む滋賀県代表チーム
実技競技2に取り組む高知県代表チーム
実技競技②の様子

身近な材料でもできる科学実験を披露

競技が終了した後は、協賛企業によるエキシビションタイムでした。重圧から解放され、リラックスした様子の生徒達は、東芝(からくり人形とロボットの実演)、学研ホールディングス(電磁誘導の実験)、パナソニック(大気圧の実験)、リテン(光のスペクトルの観察)、ケニス(静電気の実験)といった各社のショーを見学。コップと空き缶を使った大気圧実験や、風船と蛍光灯を使った静電気実験など、身近な物を使ってできる科学実験を楽しみました。

ほぼ初対面の生徒が協力して掴んだ栄冠

登壇した協働パートナー関係者と各賞を受賞したチーム代表選手
ステージ上に登壇した総合成績上位チームと栄光を讃える銀テープ
表彰式

表彰式では、主催者を代表して中村道治JST理事長が挨拶。「真剣に、かつ楽しみながら、チームで競技に取り組む姿に大変感銘を受けました」と参加者を讃え、「日本だけでなく、世界のトップレベルの中間たちと競い合って、将来の科学技術を支える多くの才能がここから羽ばたいていくことを期待します」とエールを送りました。

来賓として挨拶した藤木完治文部科学審議官は、「科学技術力、イノベーション力こそが国力の源泉の1つ。それを将来担うのは皆さんです。科学分野の研究者でも、産業や経済分野でも、科学の力を理解して初めて一流の仕事ができる。これからも科学に興味を持ち続け、実力を高めて欲しい」と期待を述べました。

この大会は、筆記競技と実技競技2つの得点を加算した総合成績で順位を決めます。総合1位は滋賀県代表チーム、2位は兵庫県代表チーム、3位は広島県代表チームとなりました。そのほか、各競技の成績優秀チームにも産学間連携による科学技術系人材育成を推進する企業協働パートナーからの企業賞などが授与されました。

メダルと賞状を手に記念撮影をする滋賀県代表チーム
優勝の滋賀県代表チームを囲む
大会委員長永澤先生(右)と中村理事長(左)

優勝した滋賀県代表チームは、滋賀大学教育学部附属中学校と栗東市立葉山中学校の合同チーム。メンバーは、女子3名が前者、男子3名が後者の生徒で、全員が2年生です。大会前には1~2回しか会う機会がなく、不安もあったそうですが、上京する新幹線の中で得意技を披露しあったりして、仲良くなったとのこと。キャプテンの前川美月さんは、「今回優勝できたのは、みんなの『科学が大好き』という思いから来る団結力と、チームワークを活かすことができたからだと思います。今回の大会でチームワークの大切さを学びました。コミュニケーション能力をもっと高めて、将来に活かしていきたいです」と喜びを語りました。

科学の甲子園ジュニアの第2回全国大会は、2014年12月上旬に東京で開催される予定です。

科学の甲子園ジュニア全国大会 選手宣誓

宣誓

今、ここに集う第1回科学の甲子園ジュニア、全国大会参加選手一同は、大会に参加できることに感謝し、日本一を目指して、互いに切磋琢磨し、最後まで正々堂々戦い抜くことを誓います。

これまで人類は、科学を発展させ、その恩恵をうけてきました。しかし、2011年、震災により私たち日本人は、科学の限界、恐ろしさをも思いしることになります。科学を取り巻く情勢は大きく変化し、今後、科学がどう進むべきか、そして、どうあるべきか、これからを担う私たちの世代に、大きな課題としてゆだねられています。

全国大会出場が決まってから今日まで、事前課題への取り組みを通して、私にはわかったことがあります。それは、科学はやっぱり楽しいということです。

今日ここに集った選手は皆、各都道府県の激しい予選を勝ち抜いてきた、科学が大好きな中学生です。この大会を通して、私たち一人一人が心から科学を楽しみ、その楽しさを日本全国に伝えること、それが私たち選手の使命であると考えます。

選手の皆さん、ともに楽しみましょう、科学の甲子園を。絶対に見せましょう、科学の底力を。そして、全国に広げましょう、科学好きの輪を。

平成25年12月21日
選手代表 宮城県古川黎明中学校
髙城龍馬