ダイジェスト・レポート

初出場21校を含む47都道府県の代表チームが、科学の力を競う

全国の高校生たちが、学校別のチームで科学の知識と技能を競う「第3回 科学の甲子園全国大会」(主催:独立行政法人科学技術振興機構[JST])が3月21日~24日、兵庫県西宮市で開催されました。各都道府県で開催された大会には過去最多となる6,704名がエントリーし、選抜された47校・366名が、筆記競技と3つの実技競技でチーム成績を競いました。競技の模様を中心に、今大会をダイジェストで振り返ります。


(右の写真は、今大会より新たに作られた優勝旗。
第1回、第2回の優勝校の名も記載されています。)

優勝旗

各自の強みを生かすチームワークで、4つの競技に挑戦

今大会の競技は、2日目の筆記からスタートしました。全競技がチーム戦の科学の甲子園では、理科の各分野はもちろん、数学や情報、実験、考察、ものづくりなどの得意分野を持ったメンバー編成と、各自の強みを融合させるチームワークが求められます。

筆記競技

筆記競技

【筆記競技】

2日目午後の実技競技①「ポリペプチド」では、当日公開の2つの課題に3人のチームで取り組みました。
課題1は、薄層クロマトグラフィーで5種類のアミノ酸を分離し、未知のアミノ酸を同定する実験です。高校の生物の教科書でも取り上げられているお馴染みの実験でもあり、操作の手順がわかりやすく示されていたためか、生徒たちはチーム内で作業分担しながら、手際よく実験を進めていました。
課題2では、21個のアミノ酸がつながってできている「ペプチドX」を6種類の酵素のうちから1つを作用させて切断するという操作を繰り返し、それらの結果からペプチドXを構成するアミノ酸の配列を決定します。この課題では、ペプチドの切断は模擬実験(ドライラボ)的に行います。切断するペプチドと酵素の組み合わせを選び、すべての組み合わせが示されているマトリックスシートの該当箇所のシールを剥がすと、剥がした所に操作の結果が表示されています。その結果を踏まえながら次の操作を行い、如何に少ない操作回数で21個すべてのアミノ酸の配列を決められるかが、勝敗の分かれ道になります。
こうした手法に不慣れな高校生も多かった様子で、操作の手順について仲間と作戦を練ってはみたものの、シールを剥がすと予想外の結果が表示されていて、頭を抱え込んだりする姿も見られました。

実験競技①

実験競技①

【実験競技①:ポリペプチド】

実技競技②は、「HIT®太陽電池:Raise The Future」(当日公開)。前半の課題1では、様々な抵抗素子の電圧計測から明るさや接続方法による太陽電池の特性を調べました。 課題2では、その特性を最大限に発揮できる「チーム旗掲揚機」を製作し、高さ4mのポールに旗を掲げ、最上部の針で風船を割ること。制限時間がレポート作成も含めて30分と限られていたためか、多くのチームがこの課題には苦戦。残り5分を切る頃から複数のチームが旗掲揚を試みましたが、旗は上がるものの風船が割れないケースが続出し、客席で応援する各校生徒や一般の観客からもため息が漏れていました。
結局、風船の割れる音が一度も聞かれないまま終了となりましたが、4mの掲揚機の上部まで旗が到達した複数のチームに得点が与えられました。「やめ」の合図の直後、会場は各チームの健闘を讃える大きな拍手の波に包まれました。最後まであきらめずにチャレンジしていた高校生たちは、滲み出る悔しさとやり終えた清々しさの笑顔で、客席に手を振り応えていました。

実験競技②

実験競技②

【実技競技②:HIT®太陽電池:Raise The Future】

中学生大会優勝チームも参戦した新競技「Mgホバーレース」

大会3日目の最終競技である実技競技③「Mg(エムジー)ホバーレース」は、内容が事前公開されていた競技です。4人のチームで所定の材料と工具類でホバークラフトの機体とマグネシウム空気電池をつくり、全長9mのコースでタイムレースを行いました。
どのチームも機体や電池の試作・試行を繰り返してきたようで、競技開始と同時に工具を手に取り、持ち込んだ設計図をもとにチームワークを発揮しながら製作に取り掛かっていました。「第1回 科学の甲子園ジュニア全国大会」(2013年12月開催)で優勝し、この競技に体験参加した滋賀県代表チームの中学生たちも、真剣な表情で作業を進めていました。
この競技では、60分という限られた製作時間で、バランスのよい軽い機体、性能のよいプロペラやファン、マグネシウム空気電池、それぞれを設計どおり製作することがポイントになりますが、2回行われた予選レースでは、多くのチームがマグネシウム空気電池の起電力を思うように得られず、苦戦していたようです。
予選を勝ち上がった8チームによる決勝レースの結果、大会初出場の常総学院高等学校(茨城県)が接戦を制して優勝。計50台以上の試作機の中から、「最も再現性の高い機体を選んだことが結果につながりました」と喜びを語っていました。

実験競技③

実験競技③

【実技競技③:Mgホバーレース】

午後の特別シンポジウムでは、山海嘉之先生(筑波大学教授)、高橋淑子先生(京都大学大学院教授)、懸秀彦先生(国立天文台准教授)、稲見昌彦先生(慶應義塾大学大学院教授)らが登壇。「特定分野の優れた才能が集まってチームを組んだとき、全く新しい科学の世界が紡がれる。その役割を果たせる突出した人材になってほしい」(山海先生)、「チームの力は大きいが、その根底にあるのは個人の力。本物の学問とは、自分の脳を絞り尽くして次の課題を自ら見出すこと。そうした経験を重ねていくことを強く期待したい」(高橋先生)と高校生たちを激励しました。
シンポジウムと並行して、産官学の担当者による特別交流会も実施。グローバルに活躍する理系人材育成のあり方について、企業や教育行政の担当者、学校現場の教員らが意見交換しました。
特別交流会の様子はこちら

特別シンポジウム
【特別シンポジウム】

企業協働パートナーとの特別交流会
【企業協働パートナーとの特別交流会】

三重県立伊勢高等学校チームが、3度目の出場で初の栄冠

表彰式では、大会実行委員長の中村道治JST理事長が、「この舞台でチームワークを発揮できたことを誇りに思い、自らの夢への第一歩を踏み出してほしい」とメッセージ。続いて文部科学省の川上伸昭科学技術・学術政策局長が、「本大会が科学好きの高校生たちのチャレンジの場として定着していることを実感する。文部科学省としても大会と参加生徒たちを応援していきたい」と述べました。吉本知之兵庫県副知事は、「チームづくりや仲間づくりという大切なことが学べる大会。今後より素晴らしいものになることを期待したい」と話しました。

表彰式
【表彰式】

優勝校記者会見
【優勝校記者会見】

県立伊勢高等学校は、三重県代表として3回連続で全国大会に出場している常連校。今大会に向けては、SSC(スーパー・サイエンス・クラブ)所属生徒を中心に、科学の各分野や数学の得意なメンバーを選抜し、2年生6名と1年生2名(うち女子3名)のチームを編成しました。
キャプテンの岡野将芳さん(2年)は、「勝因はチームワーク。私たち代表メンバーだけでなく、学校の仲間や先生方、支えてくれた全ての人たちを含めた、チームとしての大きな成果です」と喜びを語ってくれました。実技①と②でリーダーを務めた宗田真名美さん(2年)は、「実技①の課題2が数学的な内容と判断し、得意なメンバーに任せることで時間を有効に使えました」とチームワークが発揮できたことを満足そうに振り返りました。
一方で、昨年参加した先輩から問題傾向を教えてもらったことが準備に役立ったという声や、「全国大会に出場する先輩に憧れていたので、チーム加入を誘われたときはうれしかった」(山下真弥さん・2年)、「伊勢高が科学の甲子園に出場していることは入学前から知っていて、自分も出たいと思っていた」(永野皓子さん・1年)というコメントも。全国大会出場という経験を校内で共有しながら、学校全体で取り組む体制を確立してきたことも、今回の成績につながっているようです。

引率の橋本清教諭は、「教員による指導以上に、自分たちで課題意識を持ち、失敗を乗り越えて成長する姿が印象的でした」と生徒たちを讃えると共に、「この大会で得たものを自らのレベルアップに生かし、また後輩たちにも伝えてほしい」と話しました。

科学好きの高校生たちが目指す舞台は、茨城・つくばへ

競技終了後の大会は、科学好きの高校生たちが絆を深める場に変わります。最終日のエクスカーションでは県内の研究施設などを見学しながら、他校の生徒たちとの交流も楽しみました。
エントリー者数が過去最多を記録し、初出場校が21校に上るなど、都道府県代表選考もレベルアップが見受けられる科学の甲子園。2014年度の第4回全国大会は、茨城県つくば市に舞台を移して開催されることが決まっています。最先端の研究拠点を抱える“科学の聖地”が、高校生たちの次のチャレンジを待っています。

フェアウェルパーティ
【フェアウェルパーティ】

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