第4回全国大会特別交流会


「第4回 科学の甲子園 全国大会」の会場で、科学的人材の育成をテーマにした特別企画交流会が開催されました。各校の引率教員や教育委員会担当者、企業関係者らが参加し、科学教育の質・量を向上させるための産学官の連携のあり方を、学校や企業の活動事例を交えながら検討しました。



パネリスト

丹羽 章 氏 (岐阜県立岐阜高等学校校長)
園部 利彦 氏 (岐阜県立岐阜高等学校教諭)
根本 斉 氏 (CIEE日本代表部/TOEFLテスト日本事務局TOEFL事業部部長)
江頭 靖二 氏 (インテル株式会社CSR統括部部長)
根岸 茂文 氏 (一般社団法人埼玉県経営者協会専務理事)

ファシリテーター

JST理数学習支援部 藤井 春彦 主任調査員


科学の甲子園への参加を「リーダー養成」の一環に

丹羽 章 氏 交流会の前半は、各パネリストが実践している産学官コラボレーションの事例を発表しました。
今大会にも出場している県立岐阜高校の丹羽校長は、同校が県の補助を受けて実施しているグローバルリーダー養成事業を紹介。「職業・学問」「最先端科学」「国際交流」「各種大会体験プログラム」と「基調講演会」の5つを柱とする独自の取り組みで、科学の甲子園への参加も「各種大会体験プログラム」の一部に位置づけています。
科学の甲子園に向けては、前年度参加生徒による校内報告会のほか、昨年度は県内5校、今年度は近県の高校も含めた10校での合同学習会を岐阜大学で実施。生徒たちは筆記と実技の課題に取り組み、大学教員による指導を受けました。また「最先端科学体験プログラム」では、長浜バイオ大学と連携した事業も行っています。
「生徒がもっとも影響を受けるのは同級生」とする丹羽校長は、「まずは高校生同士の連携の場をつくることが重要。次に大学との連携、今後は企業との連携も検討したい」と語りました。


根本 斉 氏CIEEの根本氏は、「グローバル時代における科学的人材育成とは」と題した発表で、アメリカのオバマ大統領が2010年、これからの生徒たちに必要な教育として、“Science,Technology,Engineering,and Math”を挙げたことを紹介。すでにアメリカの大学では、統計学やデータサイエンス、A/Bテストなど新たなコースを設置する例が増えていると述べました。
また、TOEFLテストを通じた産学のコラボレーションとして、大阪府の教員が中心となって2011年に発足した「TOEFLアライアンス」を例示。TOEFLテストのコンセプトを学校の英語教育に取り入れ、世界基準での英語力養成を目指す取り組みで、現在では大阪府やCIEEが支援する活動に成長しています。根本氏は、グローバル時代の人材に英語力は当然必須とする一方、「日本の理系の高校生は英語の必要性に気づきにくいので、学校の先生方が意識づけをしてあげてほしい」と訴えました。


自治体・学校から企業への積極的なアプローチを

江頭 靖二 氏 インテル株式会社の江頭氏は、以前から力を入れている自治体との連携についての事例を紹介しました。同社では、つくば市・筑波大学との3者連携を2012年から継続中。市独自の総合学習科目「つくばスタイル科」の設置時に、同社が開発したIntel Teachプログラムを活用した教員研修を行ったほか、コンピュータ・プログラミング指導が学校教育でも世界的に盛んになっていることを受け、市の子どもたちを招いた体験イベントを実施しています。
また筑波大学との連携では、起業家教育講座、高度ITプログラムの特別講義、グローバルな環境で働く上で必要なコミュニケーションスキルを学ぶワークショップなどを開催しています。
江頭氏は、「教育も社会も急激に変化している今、学校の中だけで真に役立つ学びを提供するのは難しくなっている」とし、「教育を支援したいと考えている企業は、自治体や学校現場の皆さんが思っている以上に多い。ぜひ積極的にアプローチしていただきたい」と呼びかけました。

埼玉県経営者協会の根岸氏は、「先生がしっかり認識し生徒に教えてほしいこと」と題し、経済界の視点から学校現場に提言しました。発表の中で根岸氏は、これから必要になるのは「オペレーション型人材」ではなく「イノベーション型人材」と指摘。「特に重要なのは失敗に対するとらえ方。失敗すると二度とやらないのではなく、失敗を教訓にして先へ進める人、常に前向きで成長を求め続ける人材が社会では求められている」と述べました。
さらに参加した先生方には、「先生は教える専門家であるとともに、学びの専門家でもあると思う。広く社会の動きにアンテナを張り、生徒たちにも社会に興味を持たせるような指導をしてほしい」とメッセージしました。

「社会で求められる人材像」の共有が連携の糸口

後半は、JST藤井主任調査員の進行でパネルディスカッションを行いました。
冒頭では丹羽氏が、「学校にも外部人材が入ってくるようになってきたが、企業との連携はまだ少ない」と問題提起。「高校段階でも、企業が求めている人材像を意識した指導が必要と考えており、今後は企業との連携を検討したい」と述べました。
企業と学校・自治体の連携上の課題について江頭氏は、「自治体との連携で感じるのは、時間に対する意識の違い。企業は四半期や半年単位で結果が求められるのに対して、自治体や教育現場は数年スパンで考える。権限委譲や予算の問題で、決定が先送りになりがちなことも影響しているように感じる」と指摘しました。
根本氏はTOEFLアライアンスを例示しながら、「大学に入れるだけで終わりではなく、その先の社会でどんなスキルが求められているかを考え、情報を共有し、一緒に働く共同体を目指している」とし、こうした視点が産学官連携の糸口になるのではないかと提言。丹羽氏も、「日本をどうするのか、そのためにどんな人材を育てるのか、その共通認識のもとに高校教育が行われるべきだと思う」と述べました。

「アイデアをチームで育てる体験」が高校生に必要

これからの社会で求められる人材については、「仕事を取り巻く環境が急激に変化しており、現在の職業観は近い将来崩壊する。好きなこと、得意なことをコアに、環境の変化に対応できる力をつけることが重要」(江頭氏)、「常に前向きでチャレンジし続ける人材。失敗を恐れず成長を求める人。そのためには、何度でもチャレンジできる社会をつくる必要がある」(根岸氏)といった意見が出ました。



これを受けて園部氏は、「新しい考え方が育つような生徒にしていく必要があると感じた。誰かのアイデアを、チームで協力してより良くしていく体験をさせることが大切」としたほか、アメリカでの研修の際、部活動の代わりに地域の企業で課題研究の実験をしている高校生がいたことを紹介し、「こうした手段も、学校と企業の連携例としては有効ではないか」と提案しました。









まとめとして藤井主任調査員は、「産学官のコラボレーションは時代の必然とも言える。今回の交流会が、企業もNPOも学校も含めた、社会総ぐるみで子どもを育てる環境づくりに向けた一つのきっかけになれば幸いです」と参加者に呼びかけ、議論を締めくくりました。




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