国立研究開発法人 科学技術振興機構

【特別編】優勝チームiPS細胞研究所訪問レポート

「科学の甲子園ジュニア」優勝チームが
京都大学iPS細胞研究所を見学
~最先端の科学研究にふれる~

山中伸弥先生が語る「科学者という仕事」

昨年12月に行われた「第3回科学の甲子園ジュニア全国大会」で優勝した富山県代表チームが、3月31日、京都大学iPS細胞研究所「CiRA:サイラ」を訪問しました。科学好きの中学生たちに最先端の研究現場を体験してもらおうと、優勝特典として企画されたもので、当日はチームから5人のメンバーが参加しました。

研究所の看板の前に立つ生徒と引率教員

生徒たちはまず、CiRA国際広報室の和田濱裕之さんから、iPS細胞研究の現状や研究所の概要について説明を受けました。
CiRAは、iPS細胞に特化した中核研究機関として2010年4月に設立されました。現在は300人以上の研究者・スタッフが在籍し、iPS細胞の安全性を高める技術開発や、医療用細胞の作製と蓄積、パーキンソン病などを対象とする臨床研究、iPS細胞を用いた治療薬開発などに取り組んでいます。
マウスでの実験成功から今年で10年目となり、再生医療や新薬開発などでの本格的な利用も間近に迫っているiPS細胞。「より多くの人に移植可能な医療用iPS細胞を開発・ストックし、将来的には日本人の7~8割をカバーする予定」との説明に、生徒たちからは「他の人の体からつくった細胞を別人に使っても大丈夫なのか」「ケガをした部分にiPS細胞をのせたら、皮膚が再生されるのか」といった質問が出ていました。

和田さんの説明に対し手を挙げて質問する生徒
机の上に広げた資料を見ながら意見を交わす生徒たち

この日、生徒たちが施設見学と並んで楽しみにしていたのが、CiRA所長の山中伸弥先生との対面です。多忙なスケジュールの合間を縫って生徒たちのもとを訪れた先生は、2万3000人が参加した大会の優勝チームと紹介されると、「ではみんな理科が大好きなんだ。将来は科学者になって、この研究所にきてね」と笑顔で声をかけました。

緊張した面持ちで山中教授と対面する生徒たち

さらに、自身の経験を踏まえて「医者と科学者の違い」を説明。「目の前の患者さんを治すことに集中する医者に対して、科学研究は真っ白なキャンバスに自分の好きな絵を描くような自由さがある。人によって向き不向きがあるけど、どちらも素敵な仕事です」と語り、「今は勉強だけでなくいろんなことをがんばって。失敗も将来役に立ちます」と生徒たちを激励しました。

アッピンを抱えた山中教授と生徒たちの集合写真

将来の夢へ向かうモチベーションに

続いて、昨年完成した第2研究棟を含む主要施設を見学しました。仕切りのないオープンラボ形式の広大なフロアや、遺伝子情報をわずか数日で解析できる最新のシーケンサーを収めた部屋などを一巡した後は、実際にiPS細胞を扱う実験室や医療用細胞の調製施設へ。セキュリティが厳重で、所内でもごく一部の研究者しか入室を許されていないとの説明を聞きながら、生徒たちは扉のガラス窓を熱心にのぞき込んでいました。

実験室内で実験を行っている研究員
開放的な研究所内で働く研究員たち

2時間余りの訪問を終えた生徒たちは、「iPS細胞のつくり方や、この研究と自分たちの暮らしの関わりがよくわかりました」「研究所というと堅苦しいイメージがあったけど、全然違っていた」「山中先生にお会いできてうれしかった。研究の現場も見られて、モチベーションになりました」と充実した表情で感想を語りました。
「科学の甲子園ジュニア」への挑戦でつかんだ今回のチャンスは、最先端の科学研究と自分の将来を結びつける貴重な機会になった様子でした。