国立研究開発法人 科学技術振興機構

第6回全国大会ダイジェスト・レポート

先端科学が息づくつくばで
47都道府県代表の282名がチームで科学の力を競う

「第6回 科学の甲子園ジュニア全国大会」が2018年12月7日~9日の3日間、茨城県のつくば国際会議場とつくばカピオで開催されました。大会では、27,000名を超える中学1、2年生が参加した都道府県大会を勝ち抜いた、47の代表チーム計282名が、科学の筆記競技と実技競技に挑みました。

47チーム282人での集合写真
47都道府県を代表する47チーム、282人の中学生集合!

仲間たちとともに、科学に対する探究心を持ち続けると決意

12月7日に行われた開会式では、各代表チームがメッセージやイラストをかき込んだ旗を持って、自分たちの選んだ曲に合わせて登場。お国自慢や方言を交えながら、大会への意気込みを思い思いに語りました。選手宣誓を行ったのは、青森県代表青森市立三内中学校の金津日那汰さんと細川知哉さん。今大会が、平成最後の大会であることに触れ、平成30年間の科学の進歩を振り返りました。そして、将来に向けて仲間たちと協力しながら科学に対する探究心を持ち続ける決意を表明し、科学の課題に全力で立ち向かうことを誓って、3日間の大会が開幕しました。

扇子とフラッグを手に入場した岐阜県代表チーム
個性を発揮し、入場行進
選手宣誓を行う青森県代表選手たち
よどみなく、力強く選手宣誓

開会式に続いて、金井宣茂宇宙飛行士によるミッション報告会が行われました。国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在で実際に行った活動の数々が写真や映像も交えて紹介され、生徒たちは大いに好奇心を刺激されたようでした。後半、金井宇宙飛行士は、管制官のフライトディレクターと宇宙飛行士もコミュニケーションがとても重要であると説明し、「違う学校でチームを組んでいる県もあるみたいですね。仲良く、お互いにコミュニケーションをとって、明日から頑張ってください。」と選手たちにエールを送りました。

国際宇宙ステーション(ISS)での活動を紹介する金井宇宙飛行士

筆記競技と実技競技にチームで挑む

大会2日目の午前中には、今大会最初の競技となる筆記競技が行われました。出題は6科目から大問1つずつで計6問。チームメンバー6名全員が出場しました。この大会では、学習した知識の量や正確さを測るのではなく、生徒たちには科学と実生活・実社会との関連に気づいて貰い、科学を楽しんで貰いたいと、出題者は知恵を絞ります。その結果、生徒たちは持っている知識に加えて、必要な情報を問題文から新たに取り入れて答えを導きだすこととなり、それぞれの“考える力”が試される70分間となりました。

全員で力を出し合い筆記試験に取り組む栃木県代表チーム
全員で力を出し合い筆記試験に取り組む北海道代表チーム
チーム全員で力を出しあって 筆記試験

実技競技①では、各チーム3名が、「溶解熱はふたつある~発熱と吸熱~」と名付けられた化学実験の課題に取り組みました。試薬を純水に溶かした時に出入りする熱について考察する課題です。純水に溶かすと熱くなる試薬と、反対に冷たくなる試薬の2種類を用いて実験を行いました。

目盛りを注視し純水を計量する選手
正確に純水を計量
少しずつ試薬を量りとる選手
慎重に試薬を量りとる
純水に試薬を溶かし温度測定を行う選手たち
純水に試薬を一気に溶かし、即座に温度測定を開始
作業をうまく分担して取り組む千葉県代表チーム
作業はうまく分担できているかな?

まず、純水と試薬を正確に量りとる必要があります。さらに正しい実験結果を得るためには、量りとった試薬を純水に一気に溶かし、溶かし始めから正確に時間を計りながら温度測定を行わなくてはなりません。試薬の量を変えて何度か実験を行い、結果をグラフ化することで、溶液の濃度と温度変化との関係を調べます。競技開始から60分経過した頃には、多くのチームが実験を終えグラフの作成と問題に取り組んでいました。こうして制限時間の90分間はアッという間に過ぎました。実験に関する理解力や考察力、実験器具を正確に扱う技術力、制限時間内で作業を分担して進めるチームワークの良さが求められる競技でした。

最後は、「ザ・キューブ2~アルミのローラーコースター~」と題した実技競技②。去年の「ザ・キューブ」の進化型。直径20mm、重さ32gのステンレス製の球体をできるだけゆっくり転がり落とす装置を、一辺が45cmの立方体の空間に収まる大きさで製作します。製作材料がよりシンプルになり、使う材料を減らして軽量化に成功したチームにタイムボーナスが与えられるなどの変更点を踏まえて、各チームはデザインに工夫を凝らし、設計を進化させていました。

この競技は事前公開されていたので、どのチームも家や学校で何度も試作してきたのでしょう。試行錯誤の結果、前年度の優勝装置の“振り子の原理”を使うのがいいと判断したチームが多かったようで、振り子のように球が転がる装置が多く見られました。しかし一口に“振り子”といっても実にさまざまに工夫を施した装置が製作され、スタートに円盤をつけて、振り子に入るまでの時間を稼ぐものもありました。競技前のインタビューでは、装置の調整などを含めると80分間の制限時間内につくるのは難しいという声も聞かれましたが、すべての装置が製作規定を満たし、転がり落ちる時間を競う競技に参加できました。

仲間と協力して装置を製作する選手たち
仲間と協力して、「ザ・キューブ2」の製作中
決戦に向けて装置を調整する香川県代表チーム
決戦に向けて装置を調整
真剣な表情の監督と選手たち
監督も真剣に
スタート地点に玉を置く愛知県代表選手
緊張のスタート
球体の行方をじっと見守る選手
球体の行方を見守る
ゆっくり落ちるよう手を合わせて願う選手たち
ゆっくり落ちて!!と思わず手を合わせ・・・
好タイムに大喜びする岐阜県代表チーム
好タイムに大喜び

全寮制が育んだチームワークの良さで優勝、愛知県代表チーム

最終日には表彰式が行われました。総合優勝は、愛知県代表チーム。海陽中等教育学校は2大会ぶりに県大会を勝ち抜き全国大会への出場を果たしました。「大会が始まった時には優勝できるなんて思っていませんでした。全寮制で培ったチームワークがこの結果につながったのだと思います」とキャプテンが勝因を語りました。さらにほかのメンバーたちからも、「全寮制なので毎日2時間くらいみんなで集まって相談していました」、「筆記競技で自分の担当の問題が全くわからなかったけれど、得意なメンバーのサポートを受けて乗り切りました」、といったコメントがあり、チームワークの良さが際立っていました。

総合優勝を果たした愛知県代表チーム
あっぴんと一緒に記念撮影する愛知県代表チーム
総合優勝おめでとう!愛知県代表チーム

最後に、永岡桂子文部科学副大臣から、「チームとして競技に取り組んだこと、全国の科学好きの仲間と交流したことが、生徒の皆さんにとってかけがえのない経験になったに違いありません」、との来賓挨拶がありました。また、10月にノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑先生の、「研究者になるにあたって大事なのは“知りたい”と思うこと、“不思議だな”と思う心を大切にすること。常に疑いをもって“本当はどうなっているのだろう”と自分の目でものを見る。そして納得する。そこまで諦めない」、という言葉も紹介され、今大会が正に“探究心の大切さ”を知る機会だったということに、あらためて生徒たちは気づかされ、平成最後の科学の甲子園ジュニア全国大会は幕を閉じました。

第6回科学の甲子園ジュニア全国大会を支援してくださった協働パートナー一覧
協働パートナーの皆様、応援ありがとうございます!

~こんな一コマも~

大会の一部の模様は「スカパー!公式YouTubeチャンネル」でライブ配信されました。実技競技の際には2階の放送ブースに生徒たちが訪れ、大会出場への思いやチームワークについて、司会者の問いに応えたり、日頃の学校での様子を紹介したりする一幕もありました。

司会者からの質問に答える選手たち

また、「科学の甲子園ジュニア全国大会」は文字通り、全国の科学好きの中学生が一堂に会する貴重な機会です。競技が全て終了した2日目の夜には、生徒たちが交流を深められるように、フェアウェルパーティーが行われました。ゲームで各地入り交じった混合チームとなったり、その勢いでおしゃべりしたり、ご当地クイズ大会に挑戦したりと生徒たちはすっかり仲良くなっていました。

フェアウェルパーティーでゲームを楽しむ選手たち

大会3日目は朝から表彰式までの時間、茨城県やつくば市、協働パートナーのエキシビションやブース展示に参加しました。茨城県・つくば市関連のエキシビションとして、移動プラネタリウム、ロボットスーツHALの試着、3D床地図の観察などが実施されました。大会スポンサーの企業協働パートナーからは、ミクロの世界や光の実験ショー、半導体をテーマにしたワークショップなどが提供され、生徒たちは科学の面白さに触れるひとときを満喫していました。

(上)3D床地図の上に立って観察する選手たち/(下)協働パートナーによる実験ショーを楽しむ選手たち